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本音トーク本音トーク

2022.02.17

「…にもかかわらず……」


奥原由子
今回課題になっている曲を、より深く感じ取るためのキーワードです。

明るい曲が、必ずしも明るい状況から生まれるとは限りません。
逆に、暗かったり困難な状況から生まれた明るい名曲はたくさんあります。
むしろ、その方が主流かも。

例えば、J・シュトラウスの、生きる喜びに溢れた名曲達。
彼の生きた時代も、自身の人生も順風満帆ではありませんでした。
にもかかわらず彼は、同じ重い空気の中で生きている人々を、「明るく生きていこうよ!」という音楽で励まします。
彼らにも「…にもかかわらず……」が必要なことを知っていたから。

そして「エーデルワイス」。
ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」中の人気曲。
侵略者の圧政に屈せず、信念を貫きたいお父さん。
表向き和やかに演出した宴で、彼はこの曲をにこやかに歌い敵の意識を引きつけます。その間に裏では家族が亡命開始。緊迫した場面です。
エーデルワイスは、高山で寒風に晒される過酷な環境の中にもかかわらず、健気に一生懸命に咲く真っ白な小花です。花言葉は「高潔な勇気」。
困難にもかかわらず、意思を貫く行動のくシンボルに選ばれたのでしょう。

アイルランド民謡「夏の名残の薔薇」も。
最適な季節ではない時に、鮮やかに、あくまで凛と咲く薔薇を讃えた歌。
他民族の支配下にもかかわらず、誇り高くありたいアイルランドの人々が、シンボルとして大切に歌い継いできました。

余談ですが、
19世紀末のパリで活躍した大女優サラ・ベルナール。
彼女は、ティファニーで豪華な銀細工のセットに「にもかかわらず」と刻ませて、外国巡業にも持参していたそうです。
身一つで、困難を乗り越えつつ上を向いて前進するための必需品だったのでしょう。

今、パンデミックに遭遇している私達。
前向きに、より良い未来を目指すために、先人たちの「…にもかかわらず……」の音楽がありがたい!
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