モーツァルトへの感謝状
奥原由子
掲示板でお知らせしたように、昨年末モーツァルトの名曲集が完成しました。
嬉しいです!
これでやっと、モーツァルトへの感謝状が発送できたように感じています。
彼との出会いは、小学生の時、大好きな祖母が亡くなった頃のことです。
病気がだんだん進み、衰弱し苦しむ姿にいたたまれない日々を過ごしました。
子供心にも、本人や家族には明るい顔をしなくては、と無理に頑張りました。
そんな時、私の本当の気持ちを汲み取り、励まし、救ってくれたのが、
モーツァルトの「ファンタジー」というピアノ曲でした。
とっても暗く悲しいその曲、最後に突然、ぱーっと明るくなって終わります。
始まりの暗さも、最後の明るさも、どちらも嬉しくて毎日毎日何度も何度も繰り返し、のめり込んで弾いていました。
以来、日本での音楽学校時代もベルリンの留学時代も、その後も、私の人生、
いつもピンチの時ほど、モーツァルトが救って導いてくれました。
ある伝記作者は、
フルートカルテットの、明るく軽快なアレグロ楽章を例にして、
「走る悲しみ、涙は追いつけない。」
と表現しました。
モーツァルトは、人類の奇跡と言われるほどの天才ですが、誰よりも過酷な人生を歩みました。でも生涯、常に周囲を喜ばせよう、励まそう、という思いやり深い人だったそうです。
そんな彼の音楽だから、
「元気出しなよ。一緒に明るく前に進もうよ。」
と言う声が聞こえてくるんですね。
涙を飛び散らせながらも、
休むことなく、笑顔でビュンビュン走り抜けるモーツァルト。
私など、とっても追いつけないから、
「モーツァルトさん、ありかとう。ありがとう。」
と言いながら、これからもノソノソとついて行かせてもらいます。