音楽を言葉で表現すると、音での表現力がアップする?
奥原由子
1月に、ヴィクトル・ユーゴーの言葉、
「音楽は、言葉にできないことを、
しかも黙ってはいられないことを表現する。」
を書きましたが、今回は逆方向からのアプローチ。
「自分の手掛けている曲は、ただ指で弾けるばかりでなく、ピアノがなくても、
口で言えるようでなければいけない。」
シューマンの言葉です。
演奏者が、その曲から何を感じたか、作者の表現したかったことは何だったのかを聴き取って、言葉で表現してみましょう、です。
今回の発表会を前にして、出演者の皆さんに、それぞれの発表曲のコメントを書いてもらいました。
慣れないことで、かなり戸惑っていたようですね。
また、日常から離れ、心地よい響きの世界を楽しんでいることを察しているだけに、そこから引っ張り出すのは心苦しかったです。
でも、提案して良かったと思います。
好きなメロディやリズム、美しい響き、なぜか惹かれる、などの漠然としたイメージが、
言葉で考え、書くことによって、
「この曲は、自分の心のココに届いていたんだ。」
と、ハッキリしましたよね。
目指す演奏の方向がクッキリ見えてきましたよね。
この作業で、練習時、発表、発表後、全てで意識の在りどころが変わってきます。
本番時、何回も練習して慣れている楽譜なのに、改めてジーッと見つめて、
「起こってしまったことの反省」「先の気になる部分の心配」などの、
不必要な言葉の塊から解放されるはずです。
実感してください。
そして、
「作者と私」「私と聴き手」の心を繋ぐ音によるコミュニケーション、
という、貴重で幸福なひと時を十分に堪能してくださいますように。