「セロ弾きのゴーシュ」~音楽が心身を癒す
奥原由子
アンサンブルのグループが、病院でのイヴェントに出演することをきっかけに、宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」を思い出しました。
音楽の心身の癒し効果が注目され始めたのは昨今です。音楽学校にも音楽療法の科ができ、専門家が排出し活躍し始めています。
その音楽の効用を、賢治は約90年も前に気付き、その上子供でも理解できる童話で表現したなんて改めて驚きです。
お話は。
チェロ奏者のゴーシュは、楽団員の中でも一番下手で(ゴーシュはフランス語で「下手くそな」の意)みんなのお困りもの。
でも諦めずに毎夜猛練習をしていると、次々に鳥や動物がやってきて、「こう弾いてくれ、ああ弾いてくれ」と要求します。彼はなんだかんだと抵抗しながらもそれに応えていきます。本人は気付かなかったのですが、動物たちは彼の演奏の欠点を見抜き、見事に矯正してくれていたのです。
その上、なんとも素晴らしいことが起こっていたのです。
ある夜やってきた野ネズミが語ります。
「ここらのものは病気になるとみんな先生のおうちの床下に入って療すのでございます。」
「からだ中とても血のまわりがよくなって大へんいい気持ちですぐ癒る方もあればうちへ帰ってから癒る方もあります。」
という風で、血流の良さが免疫力を高め、快復を助ける。それに音楽が有効。賢治の感性と先見の明は素晴らしいですよね。
私は小学生の頃まで、しょっちゅう熱を出して学校を休んで寝かされていました。友達は学校で元気に過ごしているんだろうな、と思うとおいてけぼりを感じて落ち込んだものです。そんな時、レコードで好きな曲を繰り返し聴くことで気持ちが明るくなることを体験しました。
以来ずーっと音楽にはお世話になりっぱなしです。
私たちは、とりたてて意識しなくても、音楽から多くのものをもらっているんでしょうね。