ハンス・ペーター シュミッツ先生のキラキラ・キーワード その11
奥原由子
演奏で目指すところは、「何物にも束縛されない自由な情熱の表現」だよ。「お客さんを座らせて置いちゃいけないよ!」だそう。
私がシュミッツ先生と出会った時は、残念ながらもう演奏活動は引退なさっていたので、聴くことはできませんでした。かつての様子は先生の同僚であるピアノの教授が「あなたの先生のコンサートは、…」と、話してくれました。
クラシックのプログラムなのに、ロックのコンサートのように興奮したお客さんが総立ちで湧いたそうです。
本当にそういう演奏をなさってたんですね!!
凡人の私たちは様々なものに束縛されていますよね。
まず読譜、多岐にわたる技術の未熟さ等々。
理想やイメージとのギャップからいつまでたっても解放されない。
でも、これらの問題が解決しなければ、先生のおっしゃる世界は体験できないのかしら。
自分の未熟さを無視して、勝手気儘に吹きまくるというのではありません。努力して得た自分のレベルの範囲内でも、それなりに身も心も解放される喜びは味わえると思います。
そのための第一のキーは、自分の魂を音楽によって解放したいと願っているかだと思います。
第二のキーは、やはりかけがえのない「個」の魂を、音にして発進しようと作曲された曲への共感です。
私たちは、彼らの思いと出会い共感し感動したものを、拙いながらも全身全霊で情熱を込めて演奏する。
そして第三のキーは、一人でも良いから、その発信した情熱を共感したいと待っていてくれる聴き手と出会うことです。何が何でもその人に喜んでもらいたいと熱く念じることだと思います。
その時は、自分の小さな存在など顧みず。
いかがでしょうか。
今、クイーンの映画「ボヘミアン・ラプソディ」が世界的に大ヒットしています。
「少年よ、若者よ、おじさんよ、あんたたちを揺り動かしてやるぞ!」
「友よ、僕たちこそチャンピオンなんだから、最後の時まで戦い続けるだろう!」
既成の社会や環境や状況に縛られず、魂の自由と生きる情熱をと、強烈なサウンドで放つ彼ら。その上、
「あなたを愛するために僕は生まれた。」などと歌われちゃ、もうたまりません。
はっきり意識するしないに関わらず、「自分なんか何も動かすことはできない。」と、黙黙と何とか日常をやり抜いている私たちを完璧に揺さぶってくれました。
シュミッツ先生もクイーンも、求めている「解放への情熱」の大きさや深さが、圧倒的なエネルギーとなり爆発して、私たちをユッサユッサ揺さぶり立ち上がらせてしまうのだと思います。
皆様、今年も一年お付き合いくださりありがとうございました。
どうか、爽やかで新鮮な年明けを迎えられますように。