ハンス・ペーター シュミッツ先生のキラキラ・キーワード その14
奥原由子
「目的地に辿り着こうとする時は、なるべく遠回りをしなさい。」
その方が、結果的に多くを学んでいるからということだそうです。
このことは以前にも書いたかもしれませんが、今回は最近よく耳にする「AI のディープラーニング」の話を聞いていて思ったことです。
ディープラーニングは、人間の脳が新しいことを学ぶときのシステムを、AIの教育に応用したもののようです。
その中で、今回興味深かったことは。
一つのネットワークが学習したことを、別のネットワークに入力すると、より小さなネットワークで精度を出せる、「蒸留」ということができるということ。
そこで生まれた余地で、別の事も学べるのだそう。
人間の教育に似てますよね。
先生が、長年掛かって学んだ知識や技術や経験を短時間で簡単に生徒に伝えることができる。
効率良くそれらを身につけた生徒は、次に進むことができる。
これが教育の暗黙の前提で、人類の進歩につながる。
ここまでだと、シュミッツ先生のキーワードと真逆?ですが、ここからがAIと人間の違うところ。
AIと人間の関係を取り上げたNHKの番組で、脳の専門家養老孟司さんが、人間とAIは互いに補完し合うことが最良で、同じではないと語っておられました。
人間の知能は、様々なものを含んでいる。「無意識」もその一つ。
また脳は「幸せ=報酬物質」を求める。
そして動物には、a=bゆえにb=aではない。人間にはこの「動物性=感覚性」が残っている。
人間がイコールを学ぶ時、感覚を下位に置くと、人間の人間たる倫理が危ない。
そんなことで、合理的に効率良く学ぶことがだけが最良か?だそう。
番組は、
「経験を重ねることで人間は多くを手に入れる。それは成長、進歩と呼ばれる。
その過程で、大切な感覚を失うとしたら、それは進歩か?」
という疑問を投げかけて終わりました。
ここまでくれば、シュミッツ先生のキーワード、
「目的地に辿り着こうとする時は、なるべく遠回りをしなさい。」
は、有効ですよね。
その上目的地に到達した暁には、大変だった分、報酬を欲しがる脳を大喜びさせるというおまけも付きますしね。
私個人の感想。
指導者としては、長年学んできた知識と経験を合理的に伝えることと、生徒それぞれの持ち味を生かした回り道に導き入れること、この相反する二つを上手く使い分けたいものだと思いました。
では、素敵な連休を!