2019.12.27
年末には、やはりベートーヴェン!
奥原由子
今年も暮れの行事のように方々で第九シンフォニーが演奏されるようです。
もう恒例になってしまったから、改めて「何故?」なんて考えなくなってしまっているみたいに。
でも、この曲の内容を改めて意識することは意味深いことだと思います。
1789年、「自由、平等、友愛」を掲げた革命がフランスで起こりました。
それに影響を受けた、隣国ドイツの詩人シラーが、
“百万の人々よ、互いに抱き合え!この口づけを全世界に!……”
という詩を書きました。
これに感動して作曲されたのが、第九シンフォニー。
当時のウィーンは、まだ王侯貴族の支配下の封建社会。上記のような音楽を発表するベートーヴェンは、危険人物としてマークされていました。
しかし、市民はドッコイ彼の声をしっかりキャッチし共鳴していました。
その証拠。彼が亡くなった時、2万とも3万とも言われる市民が棺に連なり、墓地まで送り届けたそうです。
当時の人の証言。
「皇帝の葬儀でもこんな光景は無かった。」
また、
「私たち人類は、ベートーヴェンになれるでしょうか?」
とも。
それから何百年も経た今年も、
“百万の人々よ、互いに抱き合え!この口づけを全世界に!……”
は実現されませんでしたよね。
非力を言い訳にして、大したことのできない自分を恥じるきっかけを作ってくれるベートーヴェンに感謝しつつ新年を迎えたいと思います。