パリと繋がったオンライン公開レッスン
奥原由子
20日夜、パリ音楽院教授フィリップ・ベルナルド先生のご自宅と、東京のスタジオの学生さんとをオンラインで繋げたレッスンが、オンラインで一般に公開された。
なんという素敵なことが実現したんだろう!
ありがたくて言葉もない!
以前、東京でのベルナルド先生の公開レッスンを聴講したり、リサイタルを聴いたりして、機会があったらまた是非、と思っていた。
このご時世、当分無理なのかな、と諦めていたところへのサプライズ。
誠実で情熱あふれたエネルギッシュなレッスンは、100%納得。
リサイタルではレッスンでの内容を、これまた100%実現して聴かせてくれた。
⚫︎では、どうしてレッスンが100%納得だったのか?
それは、目指すものと、如何にしてそこに向かうかのプロセスが、シュミッツ先生と共通だったから。
世代も違い、国も違い、言葉も違うお二人だから、語り口は当然違うけど、この共通には感動した。
⚫︎まず、目指すものの共通項は?
長い歴史に育まれたヨーロッパの英智と文化の伝統。
お二人は、それら全ての結晶として音楽を捉えている。
だからその音楽を、より深く表現するには、伝統をより深く学び理解することが大切。
作曲家達は、その伝統の中で育まれ、それぞれの時代の様式に影響されつつも、個々のアイデンティティを音で書き記した。
その作曲家達のメッセージを汲み取るためには、この勉強は必修。
もしこれを学ばなければ、紙に書かれた音符をただなぞっただけの、棒読みのような演奏になってしまう。
では、それをどう学ぶのかを、ベルノルド先生は具体的に、指を折りながら4っつ提案してくれた。
①質の高い様々なジャンルの演奏を聴きなさい。フルートだけでなく、様々な楽器やオペラなど声楽も。
②絵画彫刻などの視覚芸術を観なさい。
③書物を読みなさい。
④自然からも学びなさい。(緊張と弛緩の繰り返しや、心地よいゆらぎ等々。)
んーーーん、納得!
⚫︎次に、目指すものを表現するためのプロセスは?
もちろん、低音から高音まで、クオリティの高い音と、正確で素早い指捌きを会得することはもちろん必要。
これだけでも充分に難物!
でも、目指すものを表現するには、多種多様に息を操り、フルートに伝えることはもっと大切。
具体的には?
息の発信元である横隔膜を使いこなす訓練をしなさい。
その息の通り道である口腔を意識し、思い通りの表現ができるように、またそれを妨げるブレスをしないようにコントロールしなさい。
雄弁に語ることのできる舌を訓練しなさい。
そして、出口である口輪筋の多様な使いこなしを訓練しなさい。
んーーーん、これも納得!
⚫︎以上は、大筋を大まかにまとめての報告です。
改めて、ベルノルド先生ありがとうございました。
冴え冴えの知性と、芸術や音楽や人間への熱々な愛を持ち、それをフルートで体現してくださった偉大な芸術家に感謝です。
そして、シュミッツ先生から学んだことを、時空を超えて現在の日本で、改めて確認させてもらえたのにも感謝感謝です。
ベルリンから帰国する時、シュミッツ先生に言われたことは、
「私の教えたことの全てを日本で伝えなさい。」です。
非力ながら、「はい、もうひと頑張りします。」のエネルギーをチャージしてもらえた3時間でした。