2018.03.01
3月の講師演奏曲について
モーツァルト作曲 「ロンド」(ピアノ協奏曲第27番より)~「春への憧れ」
先月は「本音トーク」で、モーツァルト晩年の作品について書きました。
今回登場の2曲が作曲されたのも、彼最後の年の1月。その12月に亡くなります。
日を前後して書かれたピアノ協奏曲と歌曲。この2曲の音楽、ジャンルは違いますが表現しているものは明らかに同じです。
歌曲「春への憧れ」は幼い少年が語っているスタイルです。
メロディは「ロンド」のテーマとほぼ同じ。 歌詞は、 “5月よ早く来て。冷たい冬はもうごめんだよ。野原で飛び跳ねて遊びたいよ。まず、スミレを咲かせて!小鳥たちも連れてきてよ!お願い!”
「ロンド」は彼の最後のピアノ協奏曲となる第27番の終楽章で、一際軽やかで透明感に溢れています。
軽やかな少年のスキップのようなリズムで始まります。彼の願い通り、小鳥が飛び交い、スミレ咲く大地のコーラスが響きます。途中、冬の北風の名残が吹きつけますが、希望が立ち上るような春が呼び戻されます。
これらを作曲した頃の彼は、心身ともに疲れ切っていました。
春を待ち望む少年の願いは、人生に明るい明日を求めるモーツァルトの願いそのまま。
彼はこの希望に満ちた明るい曲達を書くことで、春を、そして気力を呼び戻したかのように、「魔笛」や「レクイエム」など大きな傑作の数々を生み出します。
「ロンド」から「春への憧れ」をつなげて編曲してみましたので、お聴きください。
奥原由子