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試聴曲の解説集試聴曲の解説集

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2019.04.01

4月の試聴曲について

ゴセック作曲 タンブラン

春爛漫。戸外を歩きたくなるこの時期にピッタリ。笛と太鼓で心ウキウキ、身体もウキウキ小躍りさせてくれる曲をお楽しみください。

タンブランはフランスのプロバンス地方の小太鼓です。
この太鼓を使ったり、その響きをイメージした音楽もタンブランというようです。

そのプロバンスの村祭りで、肩から掛けた小太鼓を左手で打ちながら、右手で縦笛を吹いている光景をテレビで見たことがあります。奏者は年配の方もいれば、少年もいました。凄い技ですが、見様見真似、口伝で伝承されたものなんですね。その演奏に鼓舞され、人々がトントンと踊るわけです。

このゴセック作曲のタンブランもそんな雰囲気を彷彿とさせてくれます。
でも残念ながら、私は一人二役は断念!
笛とピアノ二人掛かりで、4本の腕と20本の指を使わせていただきます。
桜吹雪などイメージして、ご一緒にステップを踏んでいただけたら嬉しいです。

奥原由子

2019.03.01

3月の試聴曲について

メンデルスゾーン作曲 歌の翼に

近付いてくる春の気配を感じながら、ひととき音楽に乗っての旅はいかがでしょうか。

ハイネの詩にメンデルスゾーンが作曲しました。
「愛するあなたを歌の翼にのせて、パラダイスに運んでいこう。そして安らぎを味わい、幸福の夢を見ましょう。」 といった詩。

大空を漂う様な、なんとも気持ちの良いメロディ。天才ならではの名曲ですね。
ピアノの音形にも耳を傾けてみてください。絶え間無く上空に向かって優しい風を送り続け、翼の飛翔を支えているかのようです。

自由に空を飛ぶのは私達の永遠の夢。映画やアニメの世界でも繰り返し描かれますよね。メンデルスゾーンは、なんと音楽だけで、私達を乗せて浮かび上がらせてくれます。
しばし目を閉じてイメージを膨らませてみてください。きっとパラダイスに運んでもらえますから。

奥原由子

2019.02.01

2月の試聴曲について

モーツァルト作曲 ラルゲット

寒い日が続いていますが、こんな優しい曲で心を温めてもらえればと選びました。

先月お聴きいただいた曲は、血気盛んな二十歳の頃の、前だけ見据えて走るような生き生きとした音楽。今月の曲は、モーツァルト最後の年に書かれた最後のピアノ協奏曲の第2楽章です。(第3楽章は「春への憧れ」のメロディが印象的)

このメロディは、彼が以前に自動オルガンのための曲として書かれたものです。その後、フルート四重奏にも使われました。
人気、収入、健康、全てを無くしたこの時、なぜまたこのメロディなのでしょう。

ここからは私の妄想。
人生のどん底で彼の心に浮かび上がってきたこのメロディ。不思議な静けさとほの明るさを持った子守唄のようです。
すでに天国にいる両親、幸せだった子供時代、愛妻と子供達、等々これまでの人生全てが「愛おしい」と歌っているように聴こえます。まるで過去が走馬灯の様に回っているみたい。

この協奏曲で、彼は次の時代の音楽世界を切り開いたと言われています。
人生の締めくくりに書かれたのに、悲劇のヒーローっぽくもなく、声を荒げるでもありません。一見淡々と聴こえる音楽の中に、音楽史上空前絶後の深さが込められています。

悲喜交々、でも生きることは素晴らしい、と感じさせてくれます。
こんな音楽を残してくれた天才に、ひたすら感謝を捧げたいと思います。

奥原由子

2019.01.01

1月の試聴曲について

モーツァルト作曲 フルート協奏曲KV.299第1楽章

年の初めに明るい若さ溢れる曲をお聴きください。

フルートとハープのための協奏曲ですが、ここではピアニストがハープとオーケストラ両方をまとめて演奏しています。

書かれたのは、彼が故郷を飛び出したばかりの時期。昨秋からお聴き頂いていた四重奏と同じ頃です。
若者らしい無防備なくらいの明るさに溢れています。

私とピアニストの長谷川綾子さんがこの曲を勉強し始めたのは、共に学んでいたベルリン芸大時代。モーツァルトがこの曲を作曲したのとほぼ同じ年頃です。一緒にシュミッツ先生のレッスンを受け、顔を合わせる度に合奏して感動し合いました。

当時ベルリンは東西に分断され、その双方で超一流の音楽家達によるモーツァルトのオペラやコンサートが頻々と上演されていました。本当にありがたいお手本でした。より深くモーツァルトを学びたい、そしてそれをどう表現するか。答えを求め、躍起になって通いつめました。
後先構わずただひたむきに突き進む、青臭さの塊。

このCDを録音したのは後に帰国してからですが、かつての息吹そのままに演奏したつもりです。

何十年も時を経た今でも、この曲を弾き始めると綾子さんのピアノからは青春が湧き上がります。

モーツァルトと私たちの若気の至りの響きが、皆さんご自身の青春を思い出すひと時となりましたら嬉しいです。

奥原由子

2018.12.01

12月の試聴曲について

モーツァルト作曲 フルート四重奏曲第1番第3楽章

11月の第2楽章に続く第3楽章です。

第2楽章は、?マーク付きの語尾上げのようなメロディで終わりましたが、第3楽章は、先月の予告通り明るい旅立ちです。

途中ちょっと後ろを振り返りますが、快調な足取りは終始止まりません。
まさに「走る悲しみ、涙は追いつけない。」です。

中程、フルートとピアノ両方で「ぴょーーん、ぴょーーん」とジャンプするような音形が重なり合うように繰り返されます。
胸いっぱいに、“明日”を深呼吸をさせてもらえるようで、私、そこが大好きです。

12月5日はモーツァルトの命日です。
後世に希望、慰め、励まし、喜び等々、素晴らしいものを計り知れない程たくさん残してくれた天才に想いを馳せたいと思います。

この曲が、皆様の2019年への出発の応援曲となりましたら幸いです。
今年も一年ご清聴ありがとうございました。

奥原由子

2018.11.01

11月の試聴曲について

モーツァルト作曲 フルート四重奏曲第1番第2楽章

先月の第一楽章に続く第2楽章です。
憧れの人の窓辺でギターを爪弾きつつ歌うセレナード風。

就活不成功のマンハイムで、失恋までしてしまったモーツァルト。
人恋しさが切々と伝わってくるこの曲は、なんとも美しく、そして悲しい。

CDを録音する際、皆さんに繰り返し聴いていただくものだから、できるだけ明るく響かせたいと頑張りました。
でも、ダメでした。
一瞬の光明はあるものの、悲痛な訴えは消せませんでした。

日も短く肌寒くなってきたこの時期に、恐縮ですが一緒に泣いてください。
これもカタルシスと受け止めてもらえたら嬉しい。
涙が悲しみを洗い流し、希望へと向かわせてくれること請け合いです。
何たって「走る悲しみ、涙は追いつけない。」ですものね。

どんな困難も跳ね返し、全速力で走り抜いたモーツァルト 。
来月はこれに続く第3楽章をお聴きいただきますが、見事な気持ちの切り替え、明るい旅立ちを乞うご期待!!!
ということで。

奥原由子

2018.10.01

10月の試聴曲について

モーツァルト作曲 フルート四重奏曲第1番第1楽章

颯爽と希望に満ちて、まるで白馬に跨がり飛び立つよう始まります。
明るく若々しい息吹にあふれる名曲ですが、幸福な状況下で作曲されたものではないのです。

21歳のモーツァルトは、故郷を飛び出し就活の旅に出発します。
まず向かったのはマンハイムの宮廷。かつては神童を熱烈歓迎したのに、大人になった天才は受け入れません。誰よりも才能溢れる若者に、この後次々と降りかかる試練の始まりでした。

次の街に行く旅費も無くなった時、アマチュアのフルーティストから来た注文に応えて作曲したのがこの曲です。神の采配でしょうか、私たちにこの宝物をお恵みくださり感謝感謝ですよね。

後に伝記作家がこの曲を
「走る悲しみ、涙は追いつけない。」
と表現しています。

明るく喜ばしく軽快に走るこの曲ですが、途中暗い谷間に直面し、思わず「うーん」と呻き一瞬歩を止め、「どうしよう」と天を仰ぎます。しばらく躊躇しますが、思い直して何事も無かったかのように再び明るく走り出します。

涙をビュンビュン吹き飛ばしながらも走り続けるようなこの曲は正に
「走る悲しみ、涙は追いつけない。」
印象的なこの表現を、後に小林秀雄がシンフォニー40番のこととして紹介して有名になりましたが、実はこの曲のことだったんです。

悲喜こもごもの人生を、立ち止まりつつもトボトボと歩み続ける私たちに、
「ま、とにかく明日に向かって一緒に進もうよ。」
と前向きで爽やかなエールを送ってくれる曲です。

奥原由子

2018.09.03

9月の試聴曲について

シューベルト作曲 音楽に寄せて

先月フルートアンサンブルと本音トークで、音楽の癒し効果を話題にしました。この曲も同じテーマ。癒されていることへの感謝が響きます。

原曲は歌曲です。歌詞は、
「音楽よ、おまえは私がつらく悲しい時、いつも心に暖かい愛の火を灯し、より良い世界、幸せな明日を見せてくれた。音楽よ、ありがとう。」 といった内容。

言葉が無くても音だけで気持ちを表現してしまうシューベルト。
ピアノが鳴り始めると同時に、「ありがとう!」の響きがさざなみのように私達の心を揺り動かします。 メロディは穏やかですが、しみじみと、そして熱く感謝が伝わってくる名曲です。

31年という短い一生でしたが、シューベルトは多くの素晴らしい友達に恵まれました。この詩の作者ショーバーもその1人です。シューベルトの音楽からいつも感動を貰っていたから、こんな詩でお返しをしたのだと思います。

音楽で結ばれた絆。そこから生まれた名曲が、時を超え私たちの心をも温めてくれるんですね。

奥原由子

2018.08.01

8月の試聴曲について

モーツァルト作曲 おいで、いとしいツィターよ

夏の宵、窓の外から聴こえてきたら嬉しい曲。

「おいで、いとしいツィターよ。僕の心が彼女を想ってどのくらい痛んでいるか言えないんだけど、お前から伝えてもらえないだろうか…。」 という歌曲。
ツィターを爪弾きながらの内緒話のような語り口の奥から、期待と希望にときめく胸の鼓動が伝わってくるようです。

モーツァルトは、自作の歌曲を「交友曲」と呼んでいたそうです。親しい友人たちと冗談を言い合うように歌って楽しんだり、プレゼントしたりしていたそうです。こんなチャーミングな曲をプレゼントされたのはどんな人だったんでしょうね。

ここではフルートとピアノですが、モーツァルトの切なる想いを貴方に届けられたら嬉しいです。

奥原由子

2018.07.01

7月の試聴曲について

ヴェルディ作曲 シチリアーナ「シチリアの夕べの祈り」より

今月はイタリア、夏のリゾートたけなわのシチリア島に飛んでください。

この曲は、他国の支配下にある時代のシチリア島を舞台にしたオペラのアリアです。
過酷な運命に悩み苦しみながらも、強い意思で生き抜く女性が、親しい友人たちと過ごすつかの間のひとときに歌います。 明日は無いかもしれない人生の!

「今は生きている!」という喜びに溢れています。
誇り高い気っ風の良さが爽快です。
暗く緊迫した状況下での歌なのに、明るい希望さえも響き渡ります。

作者ヴェルディの生きた時代は、イタリア独立運動の最中でした。
彼は周囲の人々を励ましたいとの願いを込めてオペラを作曲しました。
そんなヴェルディは、今でもイタリア人にとって心のヒーローのようです。

現代日本に長々生きている私の心にも、気付け薬のような音楽です。

奥原由子

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