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講師演奏曲の解説集講師演奏曲の解説集

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2021.01.05

1月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 「ロンド」(ピアノ協奏曲第27番より)~「春への憧れ」

この曲は、1791年の今日、1月5日に完成しました。
間違いなくとても寒い日だったでしょう。
その上、この頃の彼は健康面でも経済的にもどん底状態。
そして、この年の12月5日に亡くなります。

そんな時期に何故、この上なく明るく軽やかで、喜びに満ちたこの曲が生み出されたんでしょう。?????ですね。

歌曲「春への憧れ」は幼い少年が語っているスタイルです。
歌詞は、
“5月よ早く来て。冷たい冬はもうごめんだよ。野原で飛び跳ねて遊びたいよ。まず、スミレを咲かせて!小鳥たちも連れてきてよ!お願い!”

「ロンド」のメロディは「春への憧れ」とほぼ同じ。
清々しい透明感漂う彼の最後のピアノ協奏曲第27番の終楽章。終始軽やかで、まるで少年の願った春がやってきたかのようです。
弾むようなスキップのリズムで始まり、小鳥が飛び交い、スミレ咲く大地のコーラスが喜ばしく響きます。
そこへ突然、冬の名残の北風が吹きつけます。
でもすぐに、希望が立ち上るように春が呼び戻されます。

驚くべきことに、モーツァルトは実人生でも、この見事なV字回復を体現して見せくれました。
瀕死の彼は、この希望に満ちた明るい曲達を書くことで、春を、そして気力を呼び戻したかのように、「魔笛」「レクイエム」など大きな傑作の数々を生み出します。たった一年足らずの間にですよ!!!信じられますか?

奥原由子

2020.12.02

12月の講師演奏曲について

ベートーヴェン 作曲 交響曲第9番より

ベートーヴェン 生誕250年記念の年も残り僅か。
世界中が非常事態に見舞われている現在、「いつもの第九」はより一層私たちを励ましてくれるように思います。

その終楽章、オーケストラの大音響が一瞬静まり、まるで遠くから徐々に近づいてくる希望の足音のように、ピッコロの行進曲が聴こえてきます。
「百万の人々よ、互いに抱き合え…」という大合唱を先導して!

ベートーヴェン は、シンフォニー3番「英雄」の終楽章や、オペラ「フィデリオ」の序曲などで、「明るい希望の光」を感じさせてくれる部分をフルートで表現してくれています。

どんなに苦しくても上を向いて前進し続けたベートーヴェン さん、私達も後に続けるよう頑張りますから、来年も応援どうぞよろしくお願いします。

奥原由子

2020.11.05

11月の講師演奏曲について

ドビュッシー作曲 月の光

冴え冴えとした月の光が楽しめる季節がやってきましたね。
皆さんは、どんなお月見の思い出をお持ちですか?

古今東西、様々な分野の芸術家たちが月にインスパイヤーされ、素晴らしい作品を残してくれています。


この名曲もその一つ。 いつ何時でも、澄み切った光に包まれた世界に誘れます。
そして、浄化されたような気分にしてくれますよね。

アンデルセンの童話「絵のない絵本」も心に残ります。
月が屋根裏部屋で暮らす若い画家に、世界中で見てきた事を話して聴かせるという設定。
アンデルセンは、これを読む子供たちに、人間の様々な営み、考え方や生き方で、「本当に素晴らしいことは何か。」を伝えたかったのだと思います。

現在の世界のこの状況でも、月が子供たちに、沢山の生きる喜びや未来への指針を話して聴かせられる事を祈りたいです。

今夜も月を眺めながら、これを読んでくださっている皆さんと一緒に、この曲を味わえることに感謝します。

奥原由子

2020.10.01

10月の講師演奏曲について

ドボルザーク作曲 ユモレスク

ようやく暑さも去り、深呼吸しながらの散歩も快適になってきましたね。
今月は、心地よいペースで一緒に歩いてくれて、身も心もくつろがせてくれるような曲です。

ドボルザークは、アメリカに招かれ活動していたある夏、故国で家族と共に夏休みを過ごしました。この曲は、その際に作曲されました。

彼は、こよなく愛する故郷の、緑滴る自然に包まれて散歩したのでしょう。
「今、この時、を全身全霊で満喫している」という気持ちが伝わってくるような曲だと思います。

色々大変な「今」ですが、せめてひと時、こういう曲を心に響かせながら散歩するのも良いですよね。どんな状況でも「今」は大切だから。

奥原由子

2020.09.03

9月の講師演奏曲について

シューベルト作曲 音楽に寄せて

原曲は歌曲です。歌詞は、
「音楽よ、おまえは私がつらく悲しい時、いつも心に暖かい愛の火を灯し、より良い世界、幸せな明日を見せてくれた。音楽よ、ありがとう。」
といった内容。

作詞者と作曲者の「音楽」への感謝のメッセージ。
メロディもピアノパートもシンプルで穏やかなのに、ストレートに心に届いてきます。
大変な人生を生きたシューベルトの、心の奥底から立ち上ってきた真実だからだと思います。

現在大変な状況下にいる私たちです。
周囲の状況が過酷なほど、音楽の助けが必要だし有難いと実感しています。
そんな気持ちをシューベルトは、後世の私たちも「うん、そうそう、そうなのよ!」と、共に感動できる曲にして残してくれました。

まだまだ続きそうな、息苦しいこの状況。
「より良い世界、幸せな明日は必ず造れるよ!」
と励ましてくれる、こういう音楽と過ごせる時間に感謝したいと思います。

奥原由子

2020.08.05

8月の講師演奏曲について

サティ作曲 ジムノペディ

いよいよ暑い暑い夏本番ですね。
心身の火照りを鎮めてくれるこの曲がオススメです。
血圧まで下げてくれるという説もあるようです。

作曲は先月と同じサティの人気曲。
あくまで穏やかな雰囲気を表現したくて、バスフルートで吹いてみました。

彼の斬新な作品は、同時代や後の音楽界にも絶大な影響を与えました。
でも、ご本人は出世や名誉などなどの俗世界の欲は皆無!
生前は誰も入れなかったという部屋。亡くなった時、中身の空っぽのグランドピアノや、投函されなかったラブレターの束が残されていたというエピソードも。

純粋で誠実で心優しい人。
押し付けがましく無い、「家具のような音楽」を目指したほど。

聴くものに緊張も警戒心も与えない。
スーッと入ってきて、優しく包み込んでくれる。

暑さ、コロナ、マスク。
しばし、サティがストレスから解放してくれると思います。

奥原由子

2020.07.10

7月の講師演奏曲について

サティ作曲 ピカデリー

大雨、シトシト、ジメジメ、その上コロナにマスク!
とてもとても、ニコニコと深呼吸しながら颯爽と歩けるなんてもんじゃないですよね。

そんな中、フッとこの曲を口ずさんだら、足取りが軽くなりました。

サティの自宅と、仕事場であるカフェは、パリの街を挟んで反対側。
その道程を、何時時間もかけて徒歩で通ったそう。
もしかしたら、その奇行の間に、規制にとらわれない、独自で、超超魅力的な音楽が湧き出してきたのかしら?

明るくはない人生から、私たちへのカラッと明るい贈り物。
心優しいサティに感謝しながら、ニコニコ深呼吸させていただきます。

ぜひ、皆さんもご一緒に。

奥原由子

2020.06.04

6月の講師演奏曲について

ヴィヴァルディ作曲 「かわらひわ」

私達、現在未知との遭遇の真っ最中。
でも考えてみると、人類の歴史は常にそれの繰り返しだったのかも。

ヴィヴァルディの生きた時代もですが、彼自身を取り巻く状況も困難の連続だったようです。
前向きに生き抜くためには、どれほど強力な気力を振り絞ったのでしょか。

でも、その気力が紡ぎ出したパワフルな音楽を、同時代の人々は大歓迎で享受ました。

毎日感じている重圧感から、なんとか解放されたい私達も、そのパワーをもらいたい!

ということで、今月はカラッと明るいこの曲を。

奥原由子

2020.05.01

5月の講師演奏曲について

メンデルスゾーン作曲 「春の歌」

全世界が未知の状態に見舞われていますが、日に日に若葉が芽吹く5月はやって来ました。暗いニュースと、いつもの春のコントラストが不思議な気分です。でも、私たちの世代が今まで経験して来た平穏な状況の方が、特別だったのかもしれませんね。

何はともあれ、美わしの5月はやって来ました。今回は、メンデルスゾーンが言葉無しで、音だけで描いた歌「無言歌集」から「春の歌」をお聴きください。

彼が活躍したベルリンも、私の生まれた信州の北アルプスの麓も、全ての花々は5月一斉に開花します。梅、桜、林檎などなど、百花繚乱。もうワクワクです!この曲、明るい日差しの元、喜びが春風に乗って踊っているかのような音楽です。

描かれているのは、彼が33歳の1842年の春。 この頃から今年まで、世界では様々な歴史が刻まれてきたはず。でも、春は変わらず必ずこんな風にやって来てくれていたんですよね。たまたま今年はこんな状況下ですが、先人たちと同じ春を享受できることに感謝しつつこの曲を味わいたいと思います。

奥原由子

2020.04.02

4月の講師演奏曲について

シューベルト作曲 「野ばら」

先月お聴きいただいた「すみれ」同様、今月も可憐な花を愛でる内容ではありません。命懸けの失恋物語です。「すみれ青年」は踏み潰されましたが、「野ばらお嬢さん」はポッキリ折られてしまいます。

歌詞は、同じゲーテ作。
野原に若々しく、朝のように美しい野ばらが咲いていました。
それを見つけた少年は、大喜びで駆け寄り折り取ろうとします。
野ばらは叫びます。
「そんなことしたら棘で刺しますよ。あなたが永遠に私のことを忘れないように」と。
その声は少年には届かず、折り取られてしまいました。

そうです。この2つの物語の違いは、「すみれ青年」が自ら望んで命をかけたのに対し、「野ばらお嬢さん」は抵抗の甲斐なく折り取られてしまうということ。
その違いを深く捉えた二人の天才、モーツァルトとシューベルト。
2曲の聴き比べも興味深いかと思います。

ここからは、名曲「野ばら」を生んだ3人の物語。
21歳の貴族の学生ゲーテは、18歳の牧師の娘、ブロンドのおさげ髪のフリーデリーケと恋に落ちました。しかし1年後、大学を卒業した彼は、彼女に何も言わずに去ってしまいました。残されたうら若い娘さんの心の傷は重傷。彼女は独身のまま、その生涯を終えたそうですから。
後年ゲーテは謝罪するかのように、彼女を賛美するこの詩を書きました。

この詩が、シューベルトの心を捉えたのは18歳の時。
教師の職を捨て、後先構わず、一途にフリーランスの音楽家人生に飛び込んだ頃です。31歳で一文無しのまま世を去ることになる、無謀な決断です。

当時は身分制度の厳しい時代でした。
それぞれの制約の中でしか生きざるを得なかった3人の若者。
共通項は唯一、将来を計算しない純粋な情熱の輝き。(あるいは暴発。)

この「若々しく、朝のように美しい」瞬間を、シューベルトは見事な音楽で、未来永劫に残しました。

痛みの混じったような青春の輝き。言い換えれば、愛おしい無鉄砲。
今日このごろの私にはヤケに眩しい!
奥原由子

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