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講師演奏曲の解説集講師演奏曲の解説集

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2020.02.07

2月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 「ロンド」(ピアノ協奏曲第27番より)~「春への憧れ」

ポカポカ陽気の春が待ち遠しいこの時期、こんな曲はいかがでしょう。

モーツァルトは1791年12月5日に亡くなりますが、この協奏曲はそれに先立つ冬の最中、1月5日に完成しています。
それと日を前後して書かれた歌曲「春への憧れ」。この2曲、ジャンルは違いますが、表現しているものは明らかに共通しています。

歌曲「春への憧れ」は幼い少年が語っているスタイルです。
メロディは「ロンド」のテーマとほぼ同じ。 歌詞は、 “5月よ早く来て。冷たい冬はもうごめんだよ。野原で飛び跳ねて遊びたいよ。まず、スミレを咲かせて!小鳥たちも連れてきてよ!お願い!”

ロンド」は、清々しい透明感漂う彼の最後のピアノ協奏曲第27番の終楽章。終始軽やかで、まるで少年の願った春がやってきたかのようです。
彼の弾むようなスキップのリズムで始まり、小鳥が飛び交い、スミレ咲く大地のコーラスが喜ばしく響きます。途中、冬の北風の名残が吹きつけますが、希望が立ち上るように春が呼び戻されます。

これらを作曲した頃の彼は、心身ともに疲れ切っていました。
春を待ち望む少年の願いは、人生に明るい明日を求めるモーツァルトの願いそのまま。
彼はこの希望に満ちた明るい曲達を書くことで、春を、そして気力を呼び戻したかのように、「魔笛」や「レクイエム」など大きな傑作の数々を生み出します。たった一年足らずの間にですよ!!!信じられますか?

彼の明るい音楽には、途中、真っ暗な谷底に引き摺り込まれるような瞬間があります。でも間も無く必ずV字回復して急上昇!明るく前向きな世界、時には天国までも連れて行ってくれます。
実人生でも、それを体現して見せてもらえたように思います。

奥原由子

2020.01.08

1月の試聴曲について

J.シュトラウス作曲 トリッチ・トラッチポルカ

バン! とドアを開けた途端にワッと吹き出してくる音楽と踊り回る靴音と人いきれの渦、そしておしゃべり。
外はどんなに寒くてもここは熱々。喜ばしいエネルギーに満ち溢れています。

トリッチ・トラッッチ は、ペチャクチャおしゃべりという意味だそう。
この曲、途切れなく続く速いテンポの音楽に混じって、様々なキャラクターのおしゃべりや笑い声が聞こえてきます。

皆さんもご一緒にステップを踏み身体を揺らしてご参加ください。
運動不足解消と暖房費の節減、一挙両得のご褒美がもらえます。

そして何より、共に生きる歓びが湧いてきます。

シュトラウスの時代のウィーンは、良いことばかりの夢のような時代ではなかったようです。だからこそ、山も谷も乗り越えて進み続けるのに、友人たちとのこんな時間は大切だったんですね。

奥原由子

2019.12.06

12月の試聴曲について

ベートーヴェン作曲 交響曲第9番より

12月はやっぱり第9ですね。

ベートーヴェン最後の交響曲。その最終楽章で大合唱されるのが、お馴染み「歓喜の歌」です。
“百万の人々よ、互いに抱き合え!この口づけを全世界に!……”

この歌の歌詞は、「自由、平等、友愛」を掲げたフランス革命に影響されて、ドイツの詩人シラーが書いたものです。
ベートーヴェンは、自分が求めていた世界を言葉で表現してくれた、と感動して作曲したようです。

この名曲、後の様々な歴史的な節目にも演奏されています。
「自由、平等、友愛」、取り戻された平和、などなどの大きな喜びの瞬間を祝いたい時、この曲に勝る音楽はないのでしょう。

ここでお聴きいただいているピッコロの行進曲風のメロディ。
遠くから少しづつ少しづつ希望の足音が近づいてくるかのように聴こえてきます。私たちの小さな笛が「歓喜の歌」の大合唱を先導して来るんですよ!
もう、ドキドキワクワクの瞬間です!!!

奥原由子

2019.11.01

11月の講師演奏曲について

ベートーヴェン作曲 セレナードop.41よりアレグロ

ベートーヴェン と言えば、気難しい変人というイメージありませんか?
でもそれは、当時からのデマや、捏造された最初の伝記由来の偏見と誇張が、後何世代にもわたって受けつがれてしまったものだそうです。

周囲の人々の証言や手紙などから、徹底した自由人で物言いはあくまで率直だけれど、温かく気さくで人懐っこ人物像が明らかにされています。
例えば、彼を慕う若い音楽家達とワインを飲みながら、音楽でしりとりゲームを楽しんだりもしたというような。

今月のセレナードは、そんな和気藹々とした情景を彷彿とさせます。
今で言うアップビートのリズムを多用したノリの良い曲です。
フルートとピアノの軽妙な掛け合いに、皆さんも参加して口ずさんでみてください。

奥原由子

2019.10.01

10月の講師演奏曲について

シューベルト作曲 音楽に寄せて

原曲は歌曲です。歌詞は、
「音楽よ、おまえは私がつらく悲しい時、いつも心に暖かい愛の火を灯し、より良い世界、幸せな明日を見せてくれた。音楽よ、ありがとう。」
といった内容。

この歌詞の「音楽よ、」を「シューベルトよ、」にして、彼を讃えたいと思っています。
この気持ちは、私だけでは無いようです。

後世の大作曲家達は愛奏しただけでなく、歌曲をピアノ曲に、ピアノパートをオーケストラに等々編曲までしています。
31年の人生、こんな音楽を紡ぎ出すことしかしなかった、150センチそこそこのチビで生き下手な青年シューベルト。彼を心底愛し、慈しむような編曲ばかりです。

作家コリン・デクスターは、イギリスでは「シャーロック・ホームズ」より人気のある「主任警部モース」に、
「シューベルトを聴くとどうして涙が出るんだろう。」
とつぶやかせています。

音楽評論家の故吉田秀和さんは、
「仕事だからあらゆる音楽を聴くけれど、自分のために聴くのはシューベルト。」
と書いておられました。

先日の「本音トーク」にも書きましたが、ピアニストのグルダは晩年に「即興曲集」をCDに録音し終わり、
「自分がシューベルトなのか、シューベルトが自分なのかもう分からない。これを弾き終わってまだ生きているのが不思議だ。」
とまで書いています。

シューベルトが、熱に浮かされて叫んだ生前最後の言葉は、
「ここは天国じゃないのか。ベートーヴェンが居ないじゃないか。」 だそう。

ベートーヴェンを目標に、本当に全身全霊を音楽に注ぎ込み尽くしていたんですね。
着の身着のまま、雑念の微塵もない心から発信された音楽だから、私たちの心の扉を簡単に開けて、スルスルッと届いてくるんでしょうね。

奥原由子

2019.09.03

9月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 ロマンス(ピアノ協奏曲第20番第2楽章)

人気曲です。映画「アマデウス」のエンディングにも使われました。

当時、モーツァルトの顧客である王侯貴族の好みは「あくまで心地よい」音楽。
でも彼は、もはやそれに応えるつもりはなかったかのようです。
大変な人生を送ってきた天才自身の悲喜交々が、手加減なしに情熱的に語られています。

こうなるともうこの時代の音楽ではありません。
次の世代、ベートーヴェン、ブラームス、クララ・シューマンなどが傾倒し、愛奏していたそうですから。

表現されているのは彼の人懐っこさ、優しさ、嘆き、憤り、希望等々。
それらは、現代の私たちの心も余さず代弁してくれているかのようです。
超新鮮!

奥原由子

2019.08.01

8月の講師演奏曲について

フォーレ作曲 レクイエムよりピエ・イエズ

言ってもしょうがないけど、暑いですね。
こんな時は、しばし目を閉じて、深呼吸しながら、ゆったりした音楽に心身を委ねるのがおすすめ。

この曲、ピアノのパートが、ゆりかごのように穏やかにゆらゆらと私たちを揺らしてくれます。
それに乗せたメロディは、優しく心の奥底まで染み込んできます。

そして、火照った心臓や神経が鎮められてきます。

こんなひと時を持ちつつ、お互いこのひどい暑さを乗り切りましょう。

奥原由子

2019.07.02

7月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 ピアノソナタ第11番第1楽章

ジメジメしたこの時期、カラッと明るいチャーミングなモーツァルトをお楽しみください。

愛の歌変奏曲と呼びたくなるような曲です。
喜ばしい幸福感溢れるテーマに、多彩な表情の変奏が続きます。
子猫のように甘えたり、憂いもたっぷり、オープンにおおらかに、そしてワクワク小躍りするように。

終楽章に大人気の「トルコ行進曲」を持つこのソナタ、いつどこで誰のために作曲されたのか分からないらしいです。よっぽど素敵なピアニストとの出会いがあったんでしょうね。

奥原由子

2019.06.05

6月の講師演奏曲について

グリーンスリーブス変奏曲 イギリスca1600

王侯貴族だけでなく、庶民も自分たちの喜怒哀楽をのびのびと表現し始めた時代に「グリーンスリーブス」は生まれました。
当時人気のシェイクスピアの作品にも登場するほど流行していたようです。

その彼の活躍の場はロンドン、実家はストラトフォード・オン・エイヴォン。彼が徒歩で何日もかけて往復したこの行程、私はバスで日帰りしました。その折車中で感じたのは、カメラ片手にエンジン音の中に座って運ばれている私と、雨や雪や風を直に全身で受けながら歩いた当時の人々との違いです。

自然の力に鍛えられ、宇宙の大きさを丸ごと実感していた彼らの感性は、どんなにか鋭敏で強靭だったことでしょう。
自己表現の雪解けの時代、そんな人々の心からほとばしり出てきたようなこの曲だから、今尚初々しい息吹を感じさせるのだと思います。

奥原由子

2019.05.07

5月の講師演奏曲について

シューベルト作曲 菩提樹

原曲は歌曲集「冬の旅」中の一曲。
舞台は階級制度の厳しい時代。主人公は、それを越えようという夢にやぶれ、苦しい旅をする貧しい若者。その若者に泉のほとりの菩提樹は「友よ、おまえの安らぎはここにあるよ。」と語りかけてくれます。

曲の途中突然、彼の苦難を表すような冷たい北風が吹いてきて帽子を飛ばしてしまいます。当時帽子は、彼が望んでも入れなかった上流のシンボル。それが吹き飛ばされても、もはや彼は追いかけません。そんな若者に菩提樹は変わらぬ優しさで語りかけてくれます。「友よ、おまえの安らぎはここにあるよ。」と。
救いのない物語「冬の旅」に、温かな光明が差し込む一瞬です。

西洋には、「どうして良いか分からなくなったら、大きな木に耳を当てて尋ねてごらん。」という言い伝えがあるようです。

シューベルトは、そんな大樹の存在感や木の葉のそよぎを、美しい音楽にしてくれました。その上、私たちを包み込む癒しまでも感じさせてくれます。

奇跡のような音楽を、絶え間無く紡ぎ続けた青年シューベルト。
緑滴るこの季節。今も風の中に、彼の若々しい息吹も聴こえてくるような気がします。

奥原由子

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