5月の講師の演奏について
モーツァルト作曲 協奏曲KV.299 第1楽章より
奥原由子
2月3月お聴きいただいた曲はモーツァルト晩年(と言っても30才そこそこ)の作でしたが、今回は20才そこそこの作。フレッシュな若々しさが鳴り響きます。
天才にとっての10年の密度は、凡人の何百年よりずーっと濃いんでしょうね。
信じられない程深みを増した晩年の作と、改めて聴き比べてみるのも一興かと。
もちろん、若い時からの前向きなエネルギーは生涯目減りしてません、大丈夫!
21才で新しい活躍の場を求め、故郷を飛び出したモーツァルト。しかし、かつて神童を拍手喝采で歓迎した宮廷ですが、大人になった天才は受け入れません。
次の街に向かう費用にも事欠く彼に作曲の注文をしたのは、アマチュアのフルート奏者。カルテット4曲、ソロの協奏曲2曲、そしてこのフルートとハープの協奏曲が生まれました。
私達フルートを吹く者にとっては奇跡の瞬間です。正に神の采配!感謝です。
さてこの曲ですが、窮地に立った人間から生まれ出たとは思えない明るさです。
大空に両手を広げて深呼吸するような清々しさ!
途中、下を向いたり、後ろを振り返ったりする響きも聴こえますが、再び前を向いて生き生きと進み始めます。
おかげで、この曲を吹くたびに「うん、大丈夫!」いう気分にしてもらえます。