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2020.03.06

3月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 すみれ

この曲、実は花を愛でる可愛い曲ではなく、青年の完璧な失恋物語です。

歌詞は、恋多き人だったという言葉の天才ゲーテの、すみれに託した恋心の一部始終。それに共感した、音の天才モーツァルトの音楽。
奇跡の出会いの奇跡の一曲!!!
さてこのストーリー、貴方のトキメキの想い出とどのくらい重なるかしら?

歌詞の内容は、
「野にすみれが一輪人知れず咲いていた。それは心を持ったすみれだった。
ある日、羊飼いの娘が足取りも軽く、晴れ晴れと歌いながらやって来る。
それを見たすみれは突然、自分がこの世で一番美しい花でありたいと願う。
そして摘み取られ、たった15分で良いから彼女の胸元を飾りたいと望む。
ああでも、彼女はすみれに気付きもせず、その上踏みつけてしまう!
しかしなんと、すみれは彼女の足の下で死ねることを声高らかに喜びながら息絶える。」

ゲーテの歌詞はここまで。そこにモーツァルトはもう2行、
「かわいそうなすみれ!
だがしかし、それは心を持ったすみれだった。」
と、付け加える。まるで「君のことは絶対に忘れないよ!」と言うように。

そして聴く時のツボ。
歌曲は普通、語られている内容を、全体の雰囲気で表現します。
それと異なりこの曲は、歌詞の一言一言の内容を、メロディやリズムだけでなく、長調と短調で明暗を刻々と変化させながら語っていきます。超特殊!

ここではドイツ語で歌われる歌詞がない分、モーツァルトが音で描いた場面場面を想像を巡らせてお聴きいただくのも一興かと思います。

まず穏やかな日常。それを破る突然の恋心の爆発。熱烈なそして切ない憧れ。天にも昇るような希望。そして命をも奪う程の完璧な失恋。(ジャン!と踏みつけられる音有り。)でもそれは狂喜する程本望だという!
そして、それら全部を優しく見守るモーツァルト。

今回の解説、文字が多過ぎですよね。分かっています。
これが天才の完璧簡潔な作品と、凡才の蛇足の違いですよね。

蛇年の、奥原由子

2020.02.07

2月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 「ロンド」(ピアノ協奏曲第27番より)~「春への憧れ」

ポカポカ陽気の春が待ち遠しいこの時期、こんな曲はいかがでしょう。

モーツァルトは1791年12月5日に亡くなりますが、この協奏曲はそれに先立つ冬の最中、1月5日に完成しています。
それと日を前後して書かれた歌曲「春への憧れ」。この2曲、ジャンルは違いますが、表現しているものは明らかに共通しています。

歌曲「春への憧れ」は幼い少年が語っているスタイルです。
メロディは「ロンド」のテーマとほぼ同じ。 歌詞は、 “5月よ早く来て。冷たい冬はもうごめんだよ。野原で飛び跳ねて遊びたいよ。まず、スミレを咲かせて!小鳥たちも連れてきてよ!お願い!”

ロンド」は、清々しい透明感漂う彼の最後のピアノ協奏曲第27番の終楽章。終始軽やかで、まるで少年の願った春がやってきたかのようです。
彼の弾むようなスキップのリズムで始まり、小鳥が飛び交い、スミレ咲く大地のコーラスが喜ばしく響きます。途中、冬の北風の名残が吹きつけますが、希望が立ち上るように春が呼び戻されます。

これらを作曲した頃の彼は、心身ともに疲れ切っていました。
春を待ち望む少年の願いは、人生に明るい明日を求めるモーツァルトの願いそのまま。
彼はこの希望に満ちた明るい曲達を書くことで、春を、そして気力を呼び戻したかのように、「魔笛」や「レクイエム」など大きな傑作の数々を生み出します。たった一年足らずの間にですよ!!!信じられますか?

彼の明るい音楽には、途中、真っ暗な谷底に引き摺り込まれるような瞬間があります。でも間も無く必ずV字回復して急上昇!明るく前向きな世界、時には天国までも連れて行ってくれます。
実人生でも、それを体現して見せてもらえたように思います。

奥原由子

2020.01.08

1月の試聴曲について

J.シュトラウス作曲 トリッチ・トラッチポルカ

バン! とドアを開けた途端にワッと吹き出してくる音楽と踊り回る靴音と人いきれの渦、そしておしゃべり。
外はどんなに寒くてもここは熱々。喜ばしいエネルギーに満ち溢れています。

トリッチ・トラッッチ は、ペチャクチャおしゃべりという意味だそう。
この曲、途切れなく続く速いテンポの音楽に混じって、様々なキャラクターのおしゃべりや笑い声が聞こえてきます。

皆さんもご一緒にステップを踏み身体を揺らしてご参加ください。
運動不足解消と暖房費の節減、一挙両得のご褒美がもらえます。

そして何より、共に生きる歓びが湧いてきます。

シュトラウスの時代のウィーンは、良いことばかりの夢のような時代ではなかったようです。だからこそ、山も谷も乗り越えて進み続けるのに、友人たちとのこんな時間は大切だったんですね。

奥原由子

2019.12.06

12月の試聴曲について

ベートーヴェン作曲 交響曲第9番より

12月はやっぱり第9ですね。

ベートーヴェン最後の交響曲。その最終楽章で大合唱されるのが、お馴染み「歓喜の歌」です。
“百万の人々よ、互いに抱き合え!この口づけを全世界に!……”

この歌の歌詞は、「自由、平等、友愛」を掲げたフランス革命に影響されて、ドイツの詩人シラーが書いたものです。
ベートーヴェンは、自分が求めていた世界を言葉で表現してくれた、と感動して作曲したようです。

この名曲、後の様々な歴史的な節目にも演奏されています。
「自由、平等、友愛」、取り戻された平和、などなどの大きな喜びの瞬間を祝いたい時、この曲に勝る音楽はないのでしょう。

ここでお聴きいただいているピッコロの行進曲風のメロディ。
遠くから少しづつ少しづつ希望の足音が近づいてくるかのように聴こえてきます。私たちの小さな笛が「歓喜の歌」の大合唱を先導して来るんですよ!
もう、ドキドキワクワクの瞬間です!!!

奥原由子