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2021.02.02

2月の講師演奏曲について

シューベルト作曲 「菩提樹」

音楽に表現されているものには、二つのタイプがあるようです。
一つは、作者あるいは登場人物が、表現しようとする世界にいるもの。
もう一つは、現実には無いけれど、憧れている世界。
名曲にはこの二つ目のタイプが多いように思います

先々月の、ベートーヴェンの「喜びの歌」。あの曲の描いた世界、“人類皆で愛し合い抱き合おう”は、いまだに実現されていませんよね。
先月の「春への憧れ」は、モーツァルト がどん底の状態にある真っ暗な1月に描いた、これ以上無いほど明るく軽やかで清々しい春の曲。
そして、今月の「菩提樹」もこのタイプ。

原曲は歌曲集「冬の旅」中の一曲。
舞台は階級制度の厳しい時代。主人公は、それを越えようという夢にやぶれ、苦しい旅をする貧しい若者。その若者の心に、泉のほとりの菩提樹は「友よ、おまえの安らぎはここにあるよ。」と語りかけてくれます。

どっしりと包容力に満ちた大樹。豊かに茂る緑の葉の心地良いそよぎを、シューベルトは見事に表現してしまった!
状況を知らずに聴いたらまんまと騙されてしまう。
彼は、心地よい新緑を満喫しているんだと。

今まで体験したことの無い、重苦しい冬を旅している私達。
こんな時だからこそ、憧れを描いた音楽は、力強く心の奥底まで届き、癒し、希望を与えてくれるように感じています。

目をつぶってシューベルトの夢にすっぽり巻き込まれて、深呼吸させてもらいましょう。

奥原由子

2021.01.05

1月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 「ロンド」(ピアノ協奏曲第27番より)~「春への憧れ」

この曲は、1791年の今日、1月5日に完成しました。
間違いなくとても寒い日だったでしょう。
その上、この頃の彼は健康面でも経済的にもどん底状態。
そして、この年の12月5日に亡くなります。

そんな時期に何故、この上なく明るく軽やかで、喜びに満ちたこの曲が生み出されたんでしょう。?????ですね。

歌曲「春への憧れ」は幼い少年が語っているスタイルです。
歌詞は、
“5月よ早く来て。冷たい冬はもうごめんだよ。野原で飛び跳ねて遊びたいよ。まず、スミレを咲かせて!小鳥たちも連れてきてよ!お願い!”

「ロンド」のメロディは「春への憧れ」とほぼ同じ。
清々しい透明感漂う彼の最後のピアノ協奏曲第27番の終楽章。終始軽やかで、まるで少年の願った春がやってきたかのようです。
弾むようなスキップのリズムで始まり、小鳥が飛び交い、スミレ咲く大地のコーラスが喜ばしく響きます。
そこへ突然、冬の名残の北風が吹きつけます。
でもすぐに、希望が立ち上るように春が呼び戻されます。

驚くべきことに、モーツァルトは実人生でも、この見事なV字回復を体現して見せくれました。
瀕死の彼は、この希望に満ちた明るい曲達を書くことで、春を、そして気力を呼び戻したかのように、「魔笛」「レクイエム」など大きな傑作の数々を生み出します。たった一年足らずの間にですよ!!!信じられますか?

奥原由子

2020.12.02

12月の講師演奏曲について

ベートーヴェン 作曲 交響曲第9番より

ベートーヴェン 生誕250年記念の年も残り僅か。
世界中が非常事態に見舞われている現在、「いつもの第九」はより一層私たちを励ましてくれるように思います。

その終楽章、オーケストラの大音響が一瞬静まり、まるで遠くから徐々に近づいてくる希望の足音のように、ピッコロの行進曲が聴こえてきます。
「百万の人々よ、互いに抱き合え…」という大合唱を先導して!

ベートーヴェン は、シンフォニー3番「英雄」の終楽章や、オペラ「フィデリオ」の序曲などで、「明るい希望の光」を感じさせてくれる部分をフルートで表現してくれています。

どんなに苦しくても上を向いて前進し続けたベートーヴェン さん、私達も後に続けるよう頑張りますから、来年も応援どうぞよろしくお願いします。

奥原由子

2020.11.05

11月の講師演奏曲について

ドビュッシー作曲 月の光

冴え冴えとした月の光が楽しめる季節がやってきましたね。
皆さんは、どんなお月見の思い出をお持ちですか?

古今東西、様々な分野の芸術家たちが月にインスパイヤーされ、素晴らしい作品を残してくれています。


この名曲もその一つ。 いつ何時でも、澄み切った光に包まれた世界に誘れます。
そして、浄化されたような気分にしてくれますよね。

アンデルセンの童話「絵のない絵本」も心に残ります。
月が屋根裏部屋で暮らす若い画家に、世界中で見てきた事を話して聴かせるという設定。
アンデルセンは、これを読む子供たちに、人間の様々な営み、考え方や生き方で、「本当に素晴らしいことは何か。」を伝えたかったのだと思います。

現在の世界のこの状況でも、月が子供たちに、沢山の生きる喜びや未来への指針を話して聴かせられる事を祈りたいです。

今夜も月を眺めながら、これを読んでくださっている皆さんと一緒に、この曲を味わえることに感謝します。

奥原由子