3月の講師演奏曲について
モーツァルト作曲 すみれ
この曲、実は花を愛でる可愛い曲ではなく、青年の完璧な失恋物語です。
歌詞は、恋多き人だったという言葉の天才ゲーテの、すみれに託した恋心の一部始終。それに共感した、音の天才モーツァルトの音楽。
奇跡の出会いの奇跡の一曲!!!
さてこのストーリー、貴方のトキメキの想い出とどのくらい重なるかしら?
歌詞の内容は、
「野にすみれが一輪人知れず咲いていた。それは心を持ったすみれだった。
ある日、羊飼いの娘が足取りも軽く、晴れ晴れと歌いながらやって来る。
それを見たすみれは突然、自分がこの世で一番美しい花でありたいと願う。
そして摘み取られ、たった15分で良いから彼女の胸元を飾りたいと望む。
ああでも、彼女はすみれに気付きもせず、その上踏みつけてしまう!
しかしなんと、すみれは彼女の足の下で死ねることを声高らかに喜びながら息絶える。」
ゲーテの歌詞はここまで。そこにモーツァルトはもう2行、
「かわいそうなすみれ!
だがしかし、それは心を持ったすみれだった。」
と、付け加える。まるで「君のことは絶対に忘れないよ!」と言うように。
そして聴く時のツボ。
歌曲は普通、語られている内容を、全体の雰囲気で表現します。
それと異なりこの曲は、歌詞の一言一言の内容を、メロディやリズムだけでなく、長調と短調で明暗を刻々と変化させながら語っていきます。超特殊!
ここではドイツ語で歌われる歌詞がない分、モーツァルトが音で描いた場面場面を想像を巡らせてお聴きいただくのも一興かと思います。
まず穏やかな日常。それを破る突然の恋心の爆発。熱烈なそして切ない憧れ。天にも昇るような希望。そして命をも奪う程の完璧な失恋。(ジャン!と踏みつけられる音有り。)でもそれは狂喜する程本望だという!
そして、それら全部を優しく見守るモーツァルト。
今回の解説、文字が多過ぎですよね。分かっています。
これが天才の完璧簡潔な作品と、凡才の蛇足の違いですよね。
蛇年の、奥原由子