2016.12.05
12月の講師演奏曲について
シューベルト作曲 「アヴェ・マリア」
クリスマスが近いこの時期、あちこちでこの曲が流れますよね。
どんな悲しみも苦しみも受け止めてくれるという聖母マリア。
画家や彫刻家たちは、彼女の清らかさや温かな慈愛をぜひ表現したいと、
渾身で素晴らしい名作を残しました。
この曲は、シューベルトが響きで描いた聖母マリアの肖像画でしょうか。
100パーセントの信頼を込めた、「マリア様!」という呼びかけに続いて、
心からのお願いを訴えかけるようなメロディ。
人間の祈りの声と共に、清楚で優美な女性像も目に浮かんできます。
その上、なんと、
シューベルトは彼女からのメッセージも表現してくれています!
それが、今回注目していただきたいピアノの響き。
終始途切れなく、柔らかく波打つように続く和音の響き。
それはあたかも、彼女から放射され、静かに届いてくるたっぷりの慈愛。
冬の陽だまりのように、私たちを温かく包み込んでくれる。
短く過酷な人生で、シューベルトが憧れ、求め続けた、
「わかってるわよ、大丈夫、大丈夫。」
という、穏やかな安心感でしょうか。
全世界の人々が、この曲で心を緩めてもらう12月を過ごせたら!!!
と、祈りつつ。
奥原由子