2017.03.01
3月の講師演奏曲について
シューベルト作曲 「野ばら」
今月は、爽やかな酸味のローズヒップティを味わいながら、がおすすめ。
この歌の「野ばら」は、イヌバラという名で、白からピンクの可憐な花を咲かせ、その赤い実がローズヒップだそうです。
この詩の作者はゲーテです。
そして実は、彼は野ばらそのものを愛でて、この詩を書いたのではなかったんだそうです。
21歳の学生ゲーテは、18歳の牧師の娘、ブロンドのおさげ髪のフリーデリーケと恋に落ちました。しかし1年後、大学を卒業した彼は、彼女に何も言わずに去ってしまった。
残された彼女は独身のまま、その生涯を終えたそうです。
清らかな美しい心を深く傷つけてしまった自責の念を、野ばらとそれを無情にも摘み取ってしまう少年の話として残したということです。
やれやれ!なんということでしょう!
でも、彼が「野原に花開いた、若々しく朝のように美しい野ばら」
と表現した、純粋でみずみずしく可憐なフリーデリーケの魂は、後世まで歌い継がれることになります。
それはこの詩が、シューベルトの心をとらえたからです。
当時、正に18歳。
教師の職を捨て、後先構わず、一途にフリーランスの音楽家人生に飛び込むことにした頃です。
少年が思わず引き寄せられる、飾らず気取らないけど初々しく輝く野ばら。
シューベルトは、その魅力をそのまま音で表現しました。
シンプルで弾むような伴奏に乗せた、フレッシュで愛らしいメロディで。
3人の若い命の、目の覚めるような輝きの一瞬が、彼によってこの1曲に結集され、残されたんですね。
眩しいです。
奥原由子