2017.05.01
5月の講師演奏曲について
シューベルト作曲 「ます」
今月は、爽やかな新緑の木々に囲まれた、澄んだ流れのほとりでのエピソードをお聴きいただきます。
涼やかで喜ばしい水の流れは、とびきり素敵にピアノが表現。
メロディは、スイスイと自由自在に泳ぎ回る若々しい「ます」を表現。
そこへ、ずる賢い漁師が登場。
「ます」は、流れが澄んでいる限り捕まらないはずなのに、彼は水を濁らせて釣り上げてしまいます。
その様子を、音楽はドラマチックに、そして憤慨も込めて表現。
この物語には「若いお嬢さん方、気をつけて。」という寓意も込められているそう。
封建時代に生きた作詞者シューバートの詩は、いずれも自由への憧れを歌っているそうです。
作曲はシューベルト20歳の時。改めて天才のひらめきに驚嘆です。
情景が目に浮かび、水の音も聴こえ、空気も、匂いさえも感じられる音楽。
その上、自由を奪う者に対する、詩人と音楽家の初々しい正義感も伝わってくる。
短い曲に、これほど多くの内容を込められるシューベルトは、やはり奇跡の人だと思います。
では、そのシューベルト青年と共に、美わしの5月をお過ごしください。
奥原由子