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講師演奏曲の解説集講師演奏曲の解説集

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2018.04.02

4月の講師演奏曲について

ベートーヴェン作曲 セレナードop.41よりアレグロ

今月は、春の宵のウキウキ感にピッタリの軽やかな曲をお楽しみいただきます。
明るい響きとおどけたようなリズムで、フルートとピアノが楽しげに掛け合います。

気難しそうなイメージばかり持たれ易いベートーヴェンですが、気さくで人懐っこい一面を知るこんなエピソードも残っています。
彼を慕う若い音楽家達とワインを飲みながら、音楽でしりとりゲームを楽しんだりもしたというもの。
今月のセレナードは、そんな和気藹々とした情景を彷彿とさせます。

皆さんも「タッタカタッタ、タッタカタッタ、タッタカタッタカタカタカタ、…」と口ずさみながら、ご一緒にベートーヴェンサークルに参加しましょうよ。

奥原由子

2018.03.01

3月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 「ロンド」(ピアノ協奏曲第27番より)~「春への憧れ」

先月は「本音トーク」で、モーツァルト晩年の作品について書きました。
今回登場の2曲が作曲されたのも、彼最後の年の1月。その12月に亡くなります。

日を前後して書かれたピアノ協奏曲と歌曲。この2曲の音楽、ジャンルは違いますが表現しているものは明らかに同じです。

歌曲「春への憧れ」は幼い少年が語っているスタイルです。
メロディは「ロンド」のテーマとほぼ同じ。 歌詞は、 “5月よ早く来て。冷たい冬はもうごめんだよ。野原で飛び跳ねて遊びたいよ。まず、スミレを咲かせて!小鳥たちも連れてきてよ!お願い!”

「ロンド」は彼の最後のピアノ協奏曲となる第27番の終楽章で、一際軽やかで透明感に溢れています。
軽やかな少年のスキップのようなリズムで始まります。彼の願い通り、小鳥が飛び交い、スミレ咲く大地のコーラスが響きます。途中、冬の北風の名残が吹きつけますが、希望が立ち上るような春が呼び戻されます。

これらを作曲した頃の彼は、心身ともに疲れ切っていました。
春を待ち望む少年の願いは、人生に明るい明日を求めるモーツァルトの願いそのまま。
彼はこの希望に満ちた明るい曲達を書くことで、春を、そして気力を呼び戻したかのように、「魔笛」や「レクイエム」など大きな傑作の数々を生み出します。

「ロンド」から「春への憧れ」をつなげて編曲してみましたので、お聴きください。

奥原由子

2018.02.01

2月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 四つの歌メドレー

一曲目は、オペラ《フィガロの結婚》から「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」。

このオペラのストーリー。封建時代にありながら、家来たちが奥方と結託して、浮気者の殿様を懲らしめるという、ちょっと過激な喜劇仕立てです。
この曲は、主人公フィガロが、多感で情熱過多な青年をからかう歌。
初演当時のプラハで大流行。街中のあちこちで、人々が口ずさむこのメロディが聴かれたそうです。大喜びのモーツァルト 。人々と心通じるこの出会いが、後に彼の最後のオペラ、傑作《魔笛》に繋がったのでしょうか。
(先月の「本音トーク」参照。)

二曲目は、その《魔笛》から、「なんて素敵な鈴の音だ」。

俗っぽくて小心者のモノスタトスが、魔法の鈴の音に引き込まれ、思わず踊り出してしまう場面。音楽が、嫌な奴を愛すべき奴に変えてしまう瞬間。コミカルで、なんともチャーミングな曲。

三曲目は、同じく《魔笛》から、「たえなる響のたくましさ」。

ちょっと堅い題名ですが、笛の音のパワーを歌っています。
主人公の王子タミーノが、はぐれてしまった仲間に「届け!」と笛を吹きます。まず鳥や動物たちが集まってきますが、最後、相棒パパゲーノから、ピュルルルルッとパンフルートで返事が返ってきてきます。

四曲目は、そのパパゲーノが歌う「おれは陽気な鳥刺し」。

パパゲーノは、モーツァルトの自画像とも言われます。(私のイメージでは、内面はタミーノ、対人はパパゲーノですが。)
禁欲的で真面目なタミーノとは対照的。きつい事は御免で、修行なんてとんでもない。孤独も苦手で、いつも誰かと喋りたい。望みは美味しいワインとご馳走。夢は可愛い奥さんとたくさんの子供。そんなパパゲーノの職業は、鳥を捕まえ配達する猟師だそう。

ヨーロッパでは古くから、愛や希望のシンボルとして鳥が登場します。
子供の頃から、常に周囲を喜ばせたかったモーツァルト。天に昇る直前まで、私たちにそれを届けようとしたのでしょうか。

奥原由子

2018.01.01

1月の講師演奏曲について

ベートーヴェン作曲 交響曲第9番より

ベートーヴェン最後の交響曲の最終楽章。ご存知「喜びの歌」の大合唱を前触れする役に、彼は小さなピッコロフルートを選んでくれました。
「来たよ、来たよ、来たよ!」と、小躍りしながらのお知らせ。
「トン、トン、トン、」と、近づいていくる希望の足音も聴こえます。

期待でワクワクするような新年を迎えたいと、この曲を選びました。

ベートーヴェンが、シラーの詩「歓喜に寄す」に出会ったのは22歳の頃。
お隣フランスでは「自由、平等、友愛」を掲げた革命が起こり、王侯貴族が支配する封建社会が崩壊した時代。

「人間は、分け隔てなく皆等しく兄弟。
親しい友や愛する人のいる人生は、なんて素晴らしいんだろう。
なんという喜び!
さあ、声を合わせて一緒に喜びの歌を歌おう!!!」

といったこの詩は、依然として封建社会のままのドイツの若者たちを夢中にさせました。もちろんベートーヴェン青年も。

彼は、この詩を晩年まで温めに温めて、最後の交響曲で爆発させました。
その余波は現在も広がり続け、ますます広く世界で感動を巻き起こしています。
EUのシンボル歌にもなっています。

誰もが望んでいる「人間皆兄弟。一緒に喜びの歌を歌おう!」の世界が1日も早く実現しますことを祈るばかりです。
長大な交響曲に、一瞬立ち上るピッコロの響きに願いを込めて。

奥原由子

2017.12.01

12月の講師演奏曲について

グノー=バッハ作曲 アヴェ・マリア

クリスマスシーズンには、あちこちで聴こえてくるお馴染みの曲です。
知らず知らずのうちに、安心感や明るい希望を呼び覚ましてくれる曲だからでしょうか。

ところで、この曲は、100年以上の時を隔てた、ドイツとフランスの、二人の巨匠の合作なのです。。
ピアノ伴奏に聴こえるのが、バッハ作。メロディに聴こえるのが、グノー作。。
温かさと緻密さを併せ持ち、ゆりかごのように心地よく揺らぐバッハの名作。それに乗せて、まるで心の奥底から呟いた祈りが、天に向かって広がっていくような、のびやかなグノーのメロディ。

無信心者の私でも、思わず、今生かされていることに感謝したくなってしまいます。。
時や人種や宗教を超えて、共通の気持ちを呼び覚ます音楽の力に、改めて感じ入ります。

地球上のあちこちで、区別、差別、対立のスパイラルが止まらない昨今。。
将来が危ぶまれる地球号に乗り合わせた私たち。。
この曲のように、心を開いて、お互いを生かし合い、喜ばしく溶け合って、共に明るい希望に向かえたら!

そんなことを祈りつつ、今年を締めくくりたいと思います。

皆様、今年も一年ありがとうございました。

奥原由子

2017.11.01

11月の講師演奏曲について

ドヴォルザーク作曲 スラブ舞曲

秋深き隣は何をする人ぞ(芭蕉)
さすが芭蕉。この季節の気分を最短で見事に表現。

今月は、そんな人恋しい気持ちを、ふわっと温めてくれる曲です。

作者はご存知、“新世界から”のドヴォルザーク。
彼は、音楽家の家に生まれたのではありません。また、経済的な余裕もあまり無かったそうです。しかし、音楽好きな身内や先生に育まれて、なんとか音楽家を目指して勉強が続けられたようです。
熱意が実って作曲家になった彼の音楽は、当時から自国チェコはもちろん、広くヨーロッパやアメリカでも人々を魅了しました。

その才能を買われ、あちこちから好条件の仕事依頼がありましたが、どこにいても故国を懐かしみ、帰りたがったそうです。
彼の創造力の源は、外国の大都市から得られるエネルギーでは無く、故郷の自然や人々に囲まれた環境だったのでしょう。

そんな彼の音楽からは、大地や森や人々の、生き生きとした息吹が迸り出ます。それらへの愛や感謝、感動も立ち上ります。

聴く人誰もが、構えず、安心して、喜んで心の扉を開けて招き入れたくなる音楽!

さて、日も短く、寒くなってきたから、遠いのに近い、お隣のドヴォルザークさんをお茶にお誘いしましょっと。

奥原由子

2017.10.02

10月の講師演奏曲について

ドビュッシー作曲 月の光

今年の中秋の名月は、10月4日だそうです。但し、満月は2日後の6日。

古今東西、私たち人間は、月から様々なものをもらってきました。
喜び、楽しみ、感動、そしてインスピレーション等々。

京都の銀閣寺も月を観るために建てられたのだそうですね。

松尾芭蕉が、奥の細道に旅立つきっかけも月。
松島の月が気にかかって、何も手につかなかったのだそうです。
なのに、いざ松島にたどり着くと、
『絶景にむかう時は、うばわれて不叶(かなわず)』
なんと、言葉を失ってしまったようです!

その月をドビュッシーは、こんな響きで表現しました。
静かに輝く月、その光で美しく浮かび上がる地上の万物、そして背後に広がる無限の宇宙まで感じさせてくれるような音楽。

月を愛でる時、この曲を思い出し、耳の中に響かせるのはいかがでしょうか。

奥原由子

2017.09.01

9月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 トルコ行進曲

そろそろ夏を終わらせて、芸術の秋を始めたいですよね。
そんな気分を応援してくれるような曲です。

2月にお聴きいただいた曲は、バッハが当時流行のコーヒーハウスで演奏したと書きました。
そのコーヒーは、ヨーロッパに攻めてきたオスマントルコ軍がもたらしたものでした。彼らはまた、軍楽隊も引き連れてきました。
きっちり整った当時のヨーロッパの音楽とは全く違う、太鼓やシンバルを多用した、素朴だけどエネルギッシュで勇壮活発な音楽に、人々は衝撃を受けたようです。

作曲家たちは、この雰囲気を取り入れた、“トルコ風”の曲を書きました。
モーツァルトのオペラ「後宮からの逃走」も、トルコが舞台で、全編若々しい活気に満ちています。
今月のトルコ行進曲も、終始ドキドキワクワク、エネルギーが湧き上がってきて、じっとしてはいられないような曲ですよね。

また、私の妄想。
乗馬が好きだったというモーツァルト。駿馬を駆って、スピーディで軽やかな蹄の音や、力強い躍動感を楽しんでいたんじゃ無いかしら。
そんな気分を音楽にしたらこの曲になった。

皆さんは、どんなイメージですか。

奥原由子

2017.08.01

8月の講師演奏曲について

ヴィヴァルディ作曲 ピッコロ協奏曲より第2楽章

去年お聴きいただいた「かわらひわ」は、私たちの心に、カラッと明るい爽やかな風を吹き込んでくれる曲でした。
今回はそれとは逆に、ヴィヴァルディの心の中に引き込まれてしまうような曲です。

ヴィヴァルディは、カチカチの封建時代に、理髪師でヴァイオリニストの父と仕立屋の娘の母の間に生まれます。しかも瀕死の状態だったので、2ヶ月も洗礼が受けられなかったそうです。

その庶民階級のひ弱な坊やが、神学を学び司祭になり、ヴァイオリンの名手に育ち、教会のために名曲を量産して、ローマ教皇に親しく重用されるまでに登りつめます。

一方、世俗の世界でも、90曲も書いたという程オペラが大ヒット。
(信じられない数ですね。)

質量ともに、音楽史上類を見ないほどの領域まで飛翔しました。

ところが晩年、時代の荒波に飲み込まれ、聖俗どちらからも助け舟は来ず、
貧困と失意のうちに異国で没します。葬られた貧民墓地も後に消滅し、彼の音楽も音楽史から消え去ります。

それが、200年後に不死鳥のように蘇り、音楽史上破格のミリオンセラーを記録しています。

後の時代の自由な市民精神を先駆けしたように、常に誇り高く、あくまで自力突破。そして、ゼロか十か、どころか、ゼロか万かのような熱い人生から生み出された高カロリーな彼の音楽。響き渡る生きる喜びも哀しみも、たった今生まれたばかりにように新鮮で、私たちの心をゆさゆさと揺り動かします。

さてこの曲、巨人が小さな笛を手にした時、ピンと張り詰めていた気持ちがフウッと緩み、思わず漏らした溜息のように聴こえます。

夏の宵、ひとときエアコンも灯りも消して、窓を開け、夜風に吹かれながら耳を傾けるのも一興かと。

奥原由子

2017.06.30

7月の講師演奏曲について

ヘンデル作曲 「いとしい愛らしい緑の木陰」(オンブラ・マイ・フ)

鬱陶しいこの時期ですが、木々の瑞々しい緑は、私たちをリフレッシュさせてくれますよね。

今月は、耳からの木陰気分をどうぞ。

この曲は、オペラのアリア。
「いとしい愛らしい緑の木陰、おまえが、こんなにもやさしかったことはなかった……」
と、歌われます。

52歳の作曲者ヘンデルは、無理を重ね、過労で卒中に倒れ、再起不能と言われていました。
しかし強い意志でリハビリし、奇跡的に復帰します。
その後、この曲を初め、深みの増した数々の傑作を生み出します。

これは、私の想像。
精力的で、頑固一徹なヘンデルさんです。遮二無二活動していた若い時は、木陰で憩うなんてことはなかったんじゃないかしら。
病んで、絶望の淵から蘇って初めて、木々の緑が、明るい喜びと幸福感で、優しく満たしてくれるのを感じたんじゃないかしら。

そんなことを考えてしまうほど、この曲からは、深い感動と感謝の気持ちが伝わってきますよね。

あなたは、どんな木の木陰がお好きですか。

ここからは、私事。聞き流してください。
子供の頃から、木の根元に立ち、光で透ける、重なり合った葉っぱを見上げるのが大好きでした。ですが、ベルリン留学の一年目の春、自信を失い、水しか喉に通らない私の目に、葉っぱは暗くくすんで見えたのです。
でも秋からは思い直し、冬中無心に黙々と前進し続けました。
そうしたら、次の春、葉っぱは再びキラキラと輝いてくれました。

この曲を聴く度吹く度に、あの戻ってきた明るい緑を思い出し、ヘンデルさんと一緒にしみじみと喜び合います。

奥原由子

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