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講師演奏曲の解説集講師演奏曲の解説集

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2017.06.01

6月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 「アンダンテ」ピアノ協奏曲21番第2楽章

柔らかな日差しの下、優しいそよ風に乗せた、希望の囁きが聴こえてくるように始まります。
正にモーツァルト。
彼以外、こんな風にフワッと、聴く者の心の扉を開けてくれる音楽は生み出せないでしょう。

しかし間も無く、雲がかかってきます。
ハーモニーは暗い響きを奏で、メロディはどんどん低く下がっていきます。
「ウーーン!」という呻き声まで聴こえてきます。

でもそこで、パッっと重たい黒雲を払いのけ、光明と希望を呼び戻してくれます。
暗闇の中に差し込む光の、言葉にならないほどの喜びを穏やかに響かせる。

これもモーツァルト。

子供の頃から彼の人生は、晴れと嵐の目まぐるしい繰り返し。
それも、普通の人では到底乗り越えられないレベルの。
その中を、常に全身全霊で前に向かってフルスピードで走り抜けた人です。

しかもその間、周囲には明るく優しかったそうです。

この曲は、そんな彼が、自分自身で演奏するために書いたもの。
本音の心の声を聴かせてもらえます。

奥原由子

2017.05.01

5月の講師演奏曲について

シューベルト作曲 「ます」

今月は、爽やかな新緑の木々に囲まれた、澄んだ流れのほとりでのエピソードをお聴きいただきます。

涼やかで喜ばしい水の流れは、とびきり素敵にピアノが表現。
メロディは、スイスイと自由自在に泳ぎ回る若々しい「ます」を表現。

そこへ、ずる賢い漁師が登場。
「ます」は、流れが澄んでいる限り捕まらないはずなのに、彼は水を濁らせて釣り上げてしまいます。
その様子を、音楽はドラマチックに、そして憤慨も込めて表現。

この物語には「若いお嬢さん方、気をつけて。」という寓意も込められているそう。

封建時代に生きた作詞者シューバートの詩は、いずれも自由への憧れを歌っているそうです。

作曲はシューベルト20歳の時。改めて天才のひらめきに驚嘆です。

情景が目に浮かび、水の音も聴こえ、空気も、匂いさえも感じられる音楽。
その上、自由を奪う者に対する、詩人と音楽家の初々しい正義感も伝わってくる。

短い曲に、これほど多くの内容を込められるシューベルトは、やはり奇跡の人だと思います。

では、そのシューベルト青年と共に、美わしの5月をお過ごしください。

奥原由子

2017.04.01

4月の講師演奏曲について

J.シュトラウス作曲「春の声」

いつ聴いても、フレッシュな希望と明るい幸福感をもらえる曲です。

若々しいこの曲ですが、
生み出したのは何と、58才のシュトラウスと71才の巨匠リストです。
先月の「野ばら」が20才前後の若者たちの出会いから生まれたのと対照的ですね。

二人の中高年は、あるパーティで顔を合わせ、遊びながら作ってしまったのがこの曲だそうです。

後日、このメロディに触発された友人の脚本家が歌詞をつけます。
「春が来て、ヒバリは空高く舞い上がり、万物に生命が蘇り、悩みは皆消えてしまう……」

それを、ビアンキという名ソプラノ歌手が初演します。

なんと素敵な大人のネットワークでしょう!

歳を重ねる間、苦難に出会っても、彼らは前向きな希望を持ち続けました。
その衰えを知らない情熱を支えていたのは、こういう音楽だったんですね。

奥原由子

2017.03.01

3月の講師演奏曲について

シューベルト作曲 「野ばら」

今月は、爽やかな酸味のローズヒップティを味わいながら、がおすすめ。

この歌の「野ばら」は、イヌバラという名で、白からピンクの可憐な花を咲かせ、その赤い実がローズヒップだそうです。

この詩の作者はゲーテです。
そして実は、彼は野ばらそのものを愛でて、この詩を書いたのではなかったんだそうです。

21歳の学生ゲーテは、18歳の牧師の娘、ブロンドのおさげ髪のフリーデリーケと恋に落ちました。しかし1年後、大学を卒業した彼は、彼女に何も言わずに去ってしまった。
残された彼女は独身のまま、その生涯を終えたそうです。

清らかな美しい心を深く傷つけてしまった自責の念を、野ばらとそれを無情にも摘み取ってしまう少年の話として残したということです。

やれやれ!なんということでしょう!

でも、彼が「野原に花開いた、若々しく朝のように美しい野ばら」
と表現した、純粋でみずみずしく可憐なフリーデリーケの魂は、後世まで歌い継がれることになります。

それはこの詩が、シューベルトの心をとらえたからです。
当時、正に18歳。
教師の職を捨て、後先構わず、一途にフリーランスの音楽家人生に飛び込むことにした頃です。

少年が思わず引き寄せられる、飾らず気取らないけど初々しく輝く野ばら。
シューベルトは、その魅力をそのまま音で表現しました。
シンプルで弾むような伴奏に乗せた、フレッシュで愛らしいメロディで。

3人の若い命の、目の覚めるような輝きの一瞬が、彼によってこの1曲に結集され、残されたんですね。

眩しいです。

奥原由子

2017.02.01

2月の講師演奏曲について

バッハ作曲 ポロネーズとバディネリ「管弦楽組曲2番」より

寒いですね。
今回は、熱々のコーヒーカップを抱え込みながらお聴きください。

皆さんご存知でした?
当時はヨーロッパにコーヒーが大流行し始めた時代でした。
あの大バッハは、お弟子や息子たちを引き連れて、皆でエッサエッサ楽器も運び込んで、コーヒー店で出前コンサートをやってたんですよ。
この曲は、そのために作曲されたものだそうです。

香ばしいコーヒーの香り漂う居心地の良いカフェで、自分の育てた若者達とニコニコ気楽に合奏するお父さんバッハ。音楽の教科書の、厳しい顔した「音楽の父」のイメージはないですよね。

ひととき目を閉じて、そのカフェに座ってるイメージでお過ごしいただけたらと思います。

奥原由子

2016.12.27

1月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 「キラキラ星変奏曲」

クリスマスも終わったので、少し早めですが、フレッシュに新年を迎える曲をお聴きいただきます。

実はこの変奏曲のテーマ、モーツァルト時代は「キラキラ星」ではなく、
パリで流行していた「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」
というシャンソンなのです。

若い娘さんが、恋人のことをお母さんに打ち明けようとする歌です。
初々しい高揚感!
嬉しいも悲しいも、とにかく話さずにはいられない。

こんな気持ちの表現は、モーツァルトの得意ジャンルです。

単純なメロディから、微笑ましい人生の一大事を生き生きと紡ぎだします。

ウキウキと地に足のつかないような興奮も、メソメソと身も世もない心配も。

それらを言葉無しで!音だけで!

お見事!

ところでこの曲、
子供向けというより、大人の若返りに効き目がありそうでしょ。

2017年もモーツァルトさんに、
固まりがちな私たちの心を、ユッサユッサ揺り動かし、
曇りがちな頭のレーダーをピッカピカに磨いていただきたいですよね。

奥原由子

2016.12.05

12月の講師演奏曲について

シューベルト作曲 「アヴェ・マリア」

クリスマスが近いこの時期、あちこちでこの曲が流れますよね。

どんな悲しみも苦しみも受け止めてくれるという聖母マリア。
画家や彫刻家たちは、彼女の清らかさや温かな慈愛をぜひ表現したいと、
渾身で素晴らしい名作を残しました。

この曲は、シューベルトが響きで描いた聖母マリアの肖像画でしょうか。

100パーセントの信頼を込めた、「マリア様!」という呼びかけに続いて、
心からのお願いを訴えかけるようなメロディ。
人間の祈りの声と共に、清楚で優美な女性像も目に浮かんできます。

その上、なんと、
シューベルトは彼女からのメッセージも表現してくれています!

それが、今回注目していただきたいピアノの響き。

終始途切れなく、柔らかく波打つように続く和音の響き。
それはあたかも、彼女から放射され、静かに届いてくるたっぷりの慈愛。
冬の陽だまりのように、私たちを温かく包み込んでくれる。

短く過酷な人生で、シューベルトが憧れ、求め続けた、
「わかってるわよ、大丈夫、大丈夫。」
という、穏やかな安心感でしょうか。

全世界の人々が、この曲で心を緩めてもらう12月を過ごせたら!!!
と、祈りつつ。

奥原由子

2016.11.01

11月の講師演奏曲について

ブラームス作曲 「ハンガリー舞曲第5番」

日に日に秋も深まり、人恋しいこの時期に聴きたい曲です。

国家にも宗教にも縛られず、自由に生きるジプシーの人々。
彼らが主人公の音楽は、喜怒哀楽をおおらかに歌い、踊るもの。
封建的な社会で、息を詰めて暮らすヨーロッパの人々を魅了しました。

一方ブラームスの音楽は、
「現実にここには無いけれど、こうあって欲しい。」
という憧れを、情熱的に切々と訴えかけてくるもの。

そのふたつの音楽世界が一つにとけあって、不朽の名作が生まれました。

希望の光を感じさせ、心を解き放ち、のびのびと踊らせてくれるこの曲は、当時大ヒット。

そして時を隔てた現代も、
生きる喜びが溢れる踊りの輪に、私たちを力強く巻き込んでしまいます。

両腕を大きく広げて、「さあ、おいでよ!」と。

奥原由子

2016.10.01

10月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」

暑い時期、心身のほてりを冷ましてくれる音楽をお聴きいただきましたが、
今月はエンジンを掛け直してくれるような曲です。

モーツァルトといえばこの曲。一度聴いたら忘れられない軽やかなリズムに乗せた、シンプルで親しみやすいメロディ。

でも専門家によると、楽聖晩年の一分の隙もない曲だそうですよ。

晩年と言っても、たった36年の人生ですがね。
それも天国と地獄を行き来するようなものだったようです。

皆さんのモーツァルトはどんなイメージの人ですか。

これは私のイメージ。
普通の人には考えられない程の困難をはねかえしつつ、
明るく、前向きに、誠実に、ビュンビュンと駆け抜けた人。
それも、何ものにもとらわれない高い誇りと、優しい思い遣りを併せ持ちつつ。
そして人並み外れた感性が、体験し感じ取った全てを、率直に音楽で表現できたことは奇跡のようだと思います。

この曲は、そんなモーツァルトの人となりそのもの、音で描いた自画像のような音楽だと感じています。

こんな風に、思い入れたっぷりに言葉にするとゴツゴツしてしまう内容を、モーツァルトはこの上なくスッキリとした音楽にしてしまう。 凄い!

清々しい晴朗さが響き渡ります。

奥原由子

2016.09.01

9月の講師演奏曲について

ラヴェル作曲 「亡き王女のためのパヴァーヌ」

7、8月は今年生誕150年のサティの曲をお聴きいただきました。
今月登場のラヴェルは子供の時、お父さんに連れられて、サティがピアノを演奏しているパリのカフェを訪れたそうです。
子供が好きだったサティと、多感な少年の出会い。
世代を超えて天才から天才へ、どんな電流が流れたんでしょうね。

ラヴェルは昼、穴を開けて星に見立てた雨戸を閉めて休み、
夜に作曲した人だそうです。

以前、彼がシャム猫を抱いている写真を見たことがあります。
私もシャム猫と暮らしたことがあるのですが、夜中に机に向かっているといつも手伝ってくれました。(時々船を漕ぎながら)
私のイメージですが、あの写真の猫もきっと、夜型の彼の作曲を 手伝っていたんだと思います。

ここからは、もっと私のイメージ。
この曲は、目を閉じると満天の星空を見せてくれます。
そして、星になってしまった、今は亡き大切な生命達が、
明るく輝いて、微笑みかけてくれるように感じさせてくれます。

小さな曲の中に広がる、大きな宇宙空間と懐かしい時空間!

ところであなたが、
あなたの大切な「亡き王女」達と出会えるのはどんな曲ですか。

奥原由子

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