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講師演奏曲の解説集講師演奏曲の解説集

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2018.07.01

7月の講師演奏曲について

ヴェルディ作曲 シチリアーナ「シチリアの夕べの祈り」より

今月はイタリア、夏のリゾートたけなわのシチリア島に飛んでください。

この曲は、他国の支配下にある時代のシチリア島を舞台にしたオペラのアリアです。
過酷な運命に悩み苦しみながらも、強い意思で生き抜く女性が、親しい友人たちと過ごすつかの間のひとときに歌います。 明日は無いかもしれない人生の!

「今は生きている!」という喜びに溢れています。
誇り高い気っ風の良さが爽快です。
暗く緊迫した状況下での歌なのに、明るい希望さえも響き渡ります。

作者ヴェルディの生きた時代は、イタリア独立運動の最中でした。
彼は周囲の人々を励ましたいとの願いを込めてオペラを作曲しました。
そんなヴェルディは、今でもイタリア人にとって心のヒーローのようです。

現代日本に長々生きている私の心にも、気付け薬のような音楽です。

奥原由子

2018.06.01

6月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 フィガロの結婚序曲

ジメジメのこの時季、カラカラっと爽快なこの曲をお楽しみください。

モーツァルト渾身のオペラの序曲です。

ストーリー。
時は封建時代、お殿様の言動は絶対です。パワハラ、セクハラ当たり前。
そのお殿様を、奥方と家来達が協力して、トンチの効いたお芝居に巻き込んでお灸をすえるという喜劇。

その間、様々な身分の登場人物全員の、人間的弱さから生まれる滑稽なドラマもボロボロと露呈されます。
それらをモーツァルトは、愛のこもった目線で、スリリングにスピーディーに抱腹絶倒に描き出し、めでたしめでたしに導きます。

最後のハイライト。散々翻弄されたお殿様は、家来たちの前で奥方の前に跪き、赦しを乞います。
それを奥方は心からの愛を込めて赦します。
この時オペラハウスは、温かな光に満ちた天上の音楽で満たされます。

モーツァルトは二十歳の頃、雇い主の不当な扱いに耐えかね、故郷を飛び出します。以来ずっと受け続けてきたパワハラ。その間、人類稀に見る天才の中に溜まりに溜まったエネルギーがこのオペラで一気に噴出。採算度外視で、熱に浮かされたようにのめり込みます。

でも、溢れ出した音楽のなんと高貴なこと!

「人間誰もが、赦し合い、喜びを与え合えば、幸福感に満ち溢れて生きられるよ。」
と実感させてくれる音楽に昇華させてしまいます。

お聴きいただくのは、
「おっもしろいことの始まり始まり!」と触れまわる、ドキドキワクワクな序曲。
モーツァルトの興奮は納まりません。

奥原由子

2018.05.01

5月の講師演奏曲について

リスト作曲 愛の夢

新緑の木々に鳥たちの歌声も響くこの時期、こんな曲はいかがでしょうか。

ピアノ曲で人気のリスト作曲の「愛の夢」を、ぜひフルートで吹きたくて編曲しました。
元々この曲は、リスト自身が自作の歌曲「できる限りずっと長く愛してください」を、後にピアノ曲に編曲したものです。

リストは幼い頃から、彼のピアノ演奏を聴く人皆を虜にしてしまったようです。あのベートーヴェンでさえも、思わずだっこして、おでこにキスしてしまったそうです。その人気は大人になっても「ずっと長く」続いたそうです。

そんな愛され名人のリストです。歌詞の力を借りなくても、メロディとハーモニーだけでメッセージを伝えられるこんな名曲が作曲できたのでしょう。

リストさん、あなたの希望通り、私たちはこの曲を160年以上愛し続けていますよ。
ね、皆さん。

奥原由子

2018.04.02

4月の講師演奏曲について

ベートーヴェン作曲 セレナードop.41よりアレグロ

今月は、春の宵のウキウキ感にピッタリの軽やかな曲をお楽しみいただきます。
明るい響きとおどけたようなリズムで、フルートとピアノが楽しげに掛け合います。

気難しそうなイメージばかり持たれ易いベートーヴェンですが、気さくで人懐っこい一面を知るこんなエピソードも残っています。
彼を慕う若い音楽家達とワインを飲みながら、音楽でしりとりゲームを楽しんだりもしたというもの。
今月のセレナードは、そんな和気藹々とした情景を彷彿とさせます。

皆さんも「タッタカタッタ、タッタカタッタ、タッタカタッタカタカタカタ、…」と口ずさみながら、ご一緒にベートーヴェンサークルに参加しましょうよ。

奥原由子

2018.03.01

3月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 「ロンド」(ピアノ協奏曲第27番より)~「春への憧れ」

先月は「本音トーク」で、モーツァルト晩年の作品について書きました。
今回登場の2曲が作曲されたのも、彼最後の年の1月。その12月に亡くなります。

日を前後して書かれたピアノ協奏曲と歌曲。この2曲の音楽、ジャンルは違いますが表現しているものは明らかに同じです。

歌曲「春への憧れ」は幼い少年が語っているスタイルです。
メロディは「ロンド」のテーマとほぼ同じ。 歌詞は、 “5月よ早く来て。冷たい冬はもうごめんだよ。野原で飛び跳ねて遊びたいよ。まず、スミレを咲かせて!小鳥たちも連れてきてよ!お願い!”

「ロンド」は彼の最後のピアノ協奏曲となる第27番の終楽章で、一際軽やかで透明感に溢れています。
軽やかな少年のスキップのようなリズムで始まります。彼の願い通り、小鳥が飛び交い、スミレ咲く大地のコーラスが響きます。途中、冬の北風の名残が吹きつけますが、希望が立ち上るような春が呼び戻されます。

これらを作曲した頃の彼は、心身ともに疲れ切っていました。
春を待ち望む少年の願いは、人生に明るい明日を求めるモーツァルトの願いそのまま。
彼はこの希望に満ちた明るい曲達を書くことで、春を、そして気力を呼び戻したかのように、「魔笛」や「レクイエム」など大きな傑作の数々を生み出します。

「ロンド」から「春への憧れ」をつなげて編曲してみましたので、お聴きください。

奥原由子

2018.02.01

2月の講師演奏曲について

モーツァルト作曲 四つの歌メドレー

一曲目は、オペラ《フィガロの結婚》から「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」。

このオペラのストーリー。封建時代にありながら、家来たちが奥方と結託して、浮気者の殿様を懲らしめるという、ちょっと過激な喜劇仕立てです。
この曲は、主人公フィガロが、多感で情熱過多な青年をからかう歌。
初演当時のプラハで大流行。街中のあちこちで、人々が口ずさむこのメロディが聴かれたそうです。大喜びのモーツァルト 。人々と心通じるこの出会いが、後に彼の最後のオペラ、傑作《魔笛》に繋がったのでしょうか。
(先月の「本音トーク」参照。)

二曲目は、その《魔笛》から、「なんて素敵な鈴の音だ」。

俗っぽくて小心者のモノスタトスが、魔法の鈴の音に引き込まれ、思わず踊り出してしまう場面。音楽が、嫌な奴を愛すべき奴に変えてしまう瞬間。コミカルで、なんともチャーミングな曲。

三曲目は、同じく《魔笛》から、「たえなる響のたくましさ」。

ちょっと堅い題名ですが、笛の音のパワーを歌っています。
主人公の王子タミーノが、はぐれてしまった仲間に「届け!」と笛を吹きます。まず鳥や動物たちが集まってきますが、最後、相棒パパゲーノから、ピュルルルルッとパンフルートで返事が返ってきてきます。

四曲目は、そのパパゲーノが歌う「おれは陽気な鳥刺し」。

パパゲーノは、モーツァルトの自画像とも言われます。(私のイメージでは、内面はタミーノ、対人はパパゲーノですが。)
禁欲的で真面目なタミーノとは対照的。きつい事は御免で、修行なんてとんでもない。孤独も苦手で、いつも誰かと喋りたい。望みは美味しいワインとご馳走。夢は可愛い奥さんとたくさんの子供。そんなパパゲーノの職業は、鳥を捕まえ配達する猟師だそう。

ヨーロッパでは古くから、愛や希望のシンボルとして鳥が登場します。
子供の頃から、常に周囲を喜ばせたかったモーツァルト。天に昇る直前まで、私たちにそれを届けようとしたのでしょうか。

奥原由子

2018.01.01

1月の講師演奏曲について

ベートーヴェン作曲 交響曲第9番より

ベートーヴェン最後の交響曲の最終楽章。ご存知「喜びの歌」の大合唱を前触れする役に、彼は小さなピッコロフルートを選んでくれました。
「来たよ、来たよ、来たよ!」と、小躍りしながらのお知らせ。
「トン、トン、トン、」と、近づいていくる希望の足音も聴こえます。

期待でワクワクするような新年を迎えたいと、この曲を選びました。

ベートーヴェンが、シラーの詩「歓喜に寄す」に出会ったのは22歳の頃。
お隣フランスでは「自由、平等、友愛」を掲げた革命が起こり、王侯貴族が支配する封建社会が崩壊した時代。

「人間は、分け隔てなく皆等しく兄弟。
親しい友や愛する人のいる人生は、なんて素晴らしいんだろう。
なんという喜び!
さあ、声を合わせて一緒に喜びの歌を歌おう!!!」

といったこの詩は、依然として封建社会のままのドイツの若者たちを夢中にさせました。もちろんベートーヴェン青年も。

彼は、この詩を晩年まで温めに温めて、最後の交響曲で爆発させました。
その余波は現在も広がり続け、ますます広く世界で感動を巻き起こしています。
EUのシンボル歌にもなっています。

誰もが望んでいる「人間皆兄弟。一緒に喜びの歌を歌おう!」の世界が1日も早く実現しますことを祈るばかりです。
長大な交響曲に、一瞬立ち上るピッコロの響きに願いを込めて。

奥原由子

2017.12.01

12月の講師演奏曲について

グノー=バッハ作曲 アヴェ・マリア

クリスマスシーズンには、あちこちで聴こえてくるお馴染みの曲です。
知らず知らずのうちに、安心感や明るい希望を呼び覚ましてくれる曲だからでしょうか。

ところで、この曲は、100年以上の時を隔てた、ドイツとフランスの、二人の巨匠の合作なのです。。
ピアノ伴奏に聴こえるのが、バッハ作。メロディに聴こえるのが、グノー作。。
温かさと緻密さを併せ持ち、ゆりかごのように心地よく揺らぐバッハの名作。それに乗せて、まるで心の奥底から呟いた祈りが、天に向かって広がっていくような、のびやかなグノーのメロディ。

無信心者の私でも、思わず、今生かされていることに感謝したくなってしまいます。。
時や人種や宗教を超えて、共通の気持ちを呼び覚ます音楽の力に、改めて感じ入ります。

地球上のあちこちで、区別、差別、対立のスパイラルが止まらない昨今。。
将来が危ぶまれる地球号に乗り合わせた私たち。。
この曲のように、心を開いて、お互いを生かし合い、喜ばしく溶け合って、共に明るい希望に向かえたら!

そんなことを祈りつつ、今年を締めくくりたいと思います。

皆様、今年も一年ありがとうございました。

奥原由子

2017.11.01

11月の講師演奏曲について

ドヴォルザーク作曲 スラブ舞曲

秋深き隣は何をする人ぞ(芭蕉)
さすが芭蕉。この季節の気分を最短で見事に表現。

今月は、そんな人恋しい気持ちを、ふわっと温めてくれる曲です。

作者はご存知、“新世界から”のドヴォルザーク。
彼は、音楽家の家に生まれたのではありません。また、経済的な余裕もあまり無かったそうです。しかし、音楽好きな身内や先生に育まれて、なんとか音楽家を目指して勉強が続けられたようです。
熱意が実って作曲家になった彼の音楽は、当時から自国チェコはもちろん、広くヨーロッパやアメリカでも人々を魅了しました。

その才能を買われ、あちこちから好条件の仕事依頼がありましたが、どこにいても故国を懐かしみ、帰りたがったそうです。
彼の創造力の源は、外国の大都市から得られるエネルギーでは無く、故郷の自然や人々に囲まれた環境だったのでしょう。

そんな彼の音楽からは、大地や森や人々の、生き生きとした息吹が迸り出ます。それらへの愛や感謝、感動も立ち上ります。

聴く人誰もが、構えず、安心して、喜んで心の扉を開けて招き入れたくなる音楽!

さて、日も短く、寒くなってきたから、遠いのに近い、お隣のドヴォルザークさんをお茶にお誘いしましょっと。

奥原由子

2017.10.02

10月の講師演奏曲について

ドビュッシー作曲 月の光

今年の中秋の名月は、10月4日だそうです。但し、満月は2日後の6日。

古今東西、私たち人間は、月から様々なものをもらってきました。
喜び、楽しみ、感動、そしてインスピレーション等々。

京都の銀閣寺も月を観るために建てられたのだそうですね。

松尾芭蕉が、奥の細道に旅立つきっかけも月。
松島の月が気にかかって、何も手につかなかったのだそうです。
なのに、いざ松島にたどり着くと、
『絶景にむかう時は、うばわれて不叶(かなわず)』
なんと、言葉を失ってしまったようです!

その月をドビュッシーは、こんな響きで表現しました。
静かに輝く月、その光で美しく浮かび上がる地上の万物、そして背後に広がる無限の宇宙まで感じさせてくれるような音楽。

月を愛でる時、この曲を思い出し、耳の中に響かせるのはいかがでしょうか。

奥原由子

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